2024年12月23日月曜日

Urgent Strat PD

 私は、2014年よりUrgent Strat PD(カテーテル留置から24時間以内の貯留開始)を採用してきました

文献をまとめておきます

2017年からUrgent Strat PD を取り入れているブラジルからの興味深い報告

Urgent Strat PDによる導入を開始してから、なんと、3年間でPD患者数が256%と驚異的に増加したそうです Urgent-start dialysis: Comparison of complications and outcomes between peritoneal dialysis and haemodialysis. Dias DB, Mendes ML, Caramori JT, Falbo Dos Reis P, Ponce D. Perit Dial Int. 2021 Mar;41(2):244-252. doi: 10.1177/0896860820915021. Epub 2020 Mar 30. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0896860820915021 PD患者増加には、やはり、Urgent start PDによるスムーズな導入が鍵になっているようです Urgent-Start Peritoneal Dialysis: The First Year of Brazilian Experience. Bitencourt Dias D, Mendes ML, Burgugi Banin V, Barretti P, Ponce D. Blood Purif. 2017;44(4):283-287. カテーテル挿入はタイのベッドサイド挿入と同じ方法 http://www.jmatonline.com/files/journals/1/articles/1495/public/1495-4560-1-PB.pdf 腎臓内科医による挿入 局麻下経皮セルジンガー法 正中もしくは傍腹直筋アプローチ コイル型カテーテル 深部カフのタバコ縫合なし、腹直筋前鞘前面に留置 彼らは72時間以内にHigh volume PD (30ml/kg)の透析液貯留を行うそうです カテーテルトラブルは多い印象 外科的修復を要したカテーテル位置異常 8/51例 15.6% リーク 4/51例 7.8% 興味深いのは、退院後は手技取得まで透析センターで隔日8-10hのAPDトレーニングを行うそうです(夜間?) 日本も夜間は透析室ベッド空いてるので、オーバーナイトPDトレーニングもありですね

2020年にCochrane ReviewでもUrgent Start PDを支持するレビューとなっています https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD012913.pub2/epdf/full タイから緊急導入でも問題なくできるという内容の論文が出ました June 10, 2022 Kidney International Reportsにタイのマハラトナコンラチャシマー病院からの2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群を比較した論文 https://www.kireports.org/article/S2468-0249(22)01434-6/fulltext この病院は1680床もあるタイの巨大基幹病院のようです 2018年11月から2020年2月、緊急透析導入の必要な成人207人を対象 2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群の比較 導入6週目の死亡率に差はなく、複合的合併症は37% vs 19%、透析関連合併症 24% vs 4% とUrgent Start PD群のほうが少なかった 結論として、緊急透析導入もUrgent start PDで問題なくできるということです カテーテル留置は年間30例以上3年以上の手術経験のあるベテラン腎臓内科医によって局麻下セルジンガー法で留置 タイは痩せているひとが多いのでテンコフ留置は容易だろうなと想像 また、腎臓内科医がカテ留置を行うので、外科コンサルが不要で、緊急導入時に即座にカテ留置できる背景もあるようです 貯留量は800-1000mlを仰臥位で開始し、2週間以内に1.5-2.0Lまで貯留量を増加 CAPDは5日/週とされていています、公的病院なので土日は公務員は働かないのかな?

リークはやはりUrgent Startのほうが7/104と多い(HD→PD2/103)ようですがなんとかなったと書いてありますね セルジンガーなのでこのくらいのリークはしょうがないでしょうね 私どもは小開創でduble purse-stringなのでリークはゼロです


アメリカでは2019年にThe Advancing American Kidney Health (AAKH) Executive Order(大統領令)やここ数年のCOVID-19パンデミックによって在宅透析普及が加速しています スムーズな導入のキーになるのはUrgent start PD(カテ留置から24時間以内の導入)ここ数年のホットトピックになっています 私どもも10年前よりUrgent start PDを取り入れていてまったく問題ありませんでした オペ室と外科医や麻酔科医のチャージが高額なことも背景にあるようですが、海外ではベッドサイドでの経皮セルジンガー法が行われている国も多いです 経皮セルジンガー法でUrgent start PD大丈夫?という疑問に対して 前回、PDファーストのタイからの経皮セルジンガーカテーテル挿入&Urgent start PDの報告を紹介しました Urgent start HD → PD よりも Urgent start PD のほうが合併症が少なく臨床成績も良好という報告 Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure. Parapiboon W, et al. Kidney Int Rep.2022 日本は病院資源が豊かで(とくに金銭面での)オペ室使用のハードルが低いので、ベッドサイドにこだわらなくてもよいとは思います また、日本は医療事故に対する医療訴訟環境が世界最悪なので、医療安全第一がもとめられることもあります いずれにせよ、Urgent start PDにより短期間のスムーズな導入が可能になることで、PD導入のハードルが下がることは間違いないようです(自験も含めて) 経皮セルジンガー法によるカテーテル留置ももっと取り組んでみてもよいでしょう

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