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2025年4月3日木曜日

ミニマム創テンコフカテーテル留置術 Minimal Wound Tenchoff Catheter Placement

 当院では、局所麻酔&腹壁ブロック+プレセデックス鎮静による、小開創テンコフカテーテル留置術を採用してきました。手術時間は20-30分程度、特別な機器も必要とせずカテーテルトラブルも少ない安定した術式です。

 さらなる術式改良を目指し、低侵襲な術式の改善を模索してきました。
 最近、腹直筋前鞘切開延長を行わない、ミニマム創テンコフカテーテル留置術を開発しました。優れた術式と思われますので簡単に紹介したいと思います。(近日中に動画もアップします)
 手術時間は15-25分、術創は2-3cmとラパロポートひとつ分です。小さな創で腹直筋をスプリットしないため術後疼痛もかなり軽減されます。

 セルジンガー法と比較しても、安全で早く低コストと三拍子そろった優れた術式と考えています。
 オペ室スタッフからも、エコーとCアーム準備する手間もなく、というより準備する間もないくらい短時間で終わってしまうので、セルジンガー法よりもミニマム創のほうが圧倒的に支持されています。

 安全性の面から、気管切開がセルジンガー法からハイブリッド法(気管前面露出)、ラパロのファーストポートが穿刺法から直視法が主流となったように、テンコフカテーテルも開腹操作までは直視下が推奨されると考えています。

 視野を確保するために腹直筋後鞘に支持糸をかけ、それをカフ下縁の固定および切開孔縫縮に使用することが要点です。カテーテルをしっかり寝かせることもできます。
術中にリークテストを行い、術当日から貯留開始し(Urgent start)、術翌日からは1.5Lのフル貯留を行うことができます。

 ポイントは下記になります、従来の手技の延長で簡単にできます。

  1. 腹直筋前鞘切開の延長は行わない
  2. 深部カフ上のみのミニマム切開
  3. 腹直筋後鞘に支持糸3-4針かけ吊り上げ
  4. 腹膜切開は最小
  5. タバコ縫合は行わない
  6. カフ下縁のZ縫合を支持糸を用いて行う
  7. カテーテル腹直筋後鞘固定は行う
  8. トンネラーにて腹直筋背側を通し前鞘を貫通
  9. トップカフ切開部へトンネラーで誘導
腹直筋前鞘切開を延長しないため
その分手術操作が短縮
皮膚切開・腹直筋スプリットは最小限
術後痛も少なくなります
カテ先端を恥骨上縁より2-4cm下におき
深部カフポジションを決定
コツ:皮下脂肪厚いときはやや頭側にする
支持糸は結紮したときに縫縮されるよう
切開予定部を中心に円を描くよう3-4針かけ
結紮せずモスキートで把持しておく
コツ:1針で腹直筋後鞘に3バイトずつ運針
創が小さいため腹壁に沿わせやすいように
足側腹壁を筋鈎でしっかり引き上げ挿入する
ポイント:カフが皮膚に接触しないよう注意
針を残しておいた支持糸を使用しカフ下縁にZ縫合
結紮することで切開孔が縫縮される
リークテスト200mlおこない
必要に応じ追加縫合
カテを寝かせるため後鞘前面に縫合固定
先端鈍弱弯トンネラーを腹直筋背側に沿わせ
ブラインド操作で前鞘を適切な位置で貫通
トップカフ固定予定切開部まで皮下を誘導
コツ:トップカフ位置が創直下にならぬよう
カフは皮膚接触避け消毒しておく(感染予防)

続いて出口部まで皮下を誘導
当院では上腹部肋骨弓上出口で行っている
術当日0.5Lで洗浄し問題なければ1.0L貯留
翌日からは1.5Lフル貯留開始
コツ:少しくらいの出口部出血は焼かずに圧迫で止血

2025年2月24日月曜日

毎年74%の透析患者がシャントトラブル発症し治療に400億円以上 ★シャントPTAたった1回分の手術コストで腹膜透析に切り替え可能 Vascular access dysfunction incidence and cost among Japanese dialysis patients

 Vascular access dysfunction incidence among Japanese dialysis patients from NDB Open Data Japan

Kenta T. Suzuki, Kiyoshi Naemura & Yuichi Sakumura

Scientific Reports volume 15, Article number: 6523 (2025) 

https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8

奈良先端科学技術大学院大学データ駆動型生物学教室から内シャント治療に関する興味深い論文が出ました

https://www.sakulab.org/home


2020-2022年度のNDB Openを使用し請求コードに基づいて、年間VA機能障害率と3か月再発率を計算。平均年間VA機能障害率は74.0%で、3か月再発率は16.9%であった。女性と高齢患者では、その割合が高く年齢は 正の相関関係にあった (ρ = 0.827–0.941)。

https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8/tables/1

https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8/figures/1

VA 機能障害率は都道府県によって異なっており、治療介入にかなりの地域差があるようですね。愛知県や中部地方と宮城県が多いようです。

https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8/figures/2


Kコードの分析なので重複カウントによって内シャント機能障害率がオーバーカウントされていると感じましたが治療数の把握にはなり、改めて内シャント機能障害によるPTA医療費が莫大な額になっていることがわかります。


手技料だけで

(184,008+37,590)件*120,000円=265億9176万円

いちばん安いデバイスで医療材料を計算

(184,008+37,590)件*(バルーン37,800円+ガイドワイヤー13,700円)=114億1229万円

足すと、手技料と医療材料の最低値概算で380億405万円という莫大な額になり、実際は400-500億円以上になることが推測されます。

PTA以外にも下記にて請求するケースもあり、これらを追加するとさらに増えるでしょう。

内シャント血栓除去術 3590点

四肢の血管拡張術・血栓除去術 22,590点

内シャント造設術 12080点

人工血管内シャント造設術 30290点

上腕動脈表在化法 5000点


シャントPTAたった1回分の手術コストで腹膜透析に切り替え可能です、追加治療も不要です。

血管に乏しい高齢者にはますます腹膜透析を勧めるべきです。

K653-3 テンコフ留置術 12000点


透析医学会でも内シャント治療のセッションは立ち見が出るほど大盛況です。それだけ、トラブルが多いということなのです。

シャントPTAは病院のドル箱になっており、病院経営が厳しい昨今、手放したくないのもわかりますが、患者中心医療の時代ですので、患者に苦痛を与え社会コストを押し上げる治療は一刻も早くやめるべきです。

2025年1月27日月曜日

Urgent Strat PD(カテーテル留置から24時間以内の貯留開始)を標準にしましょう Make Urgent Strat PD (start indwelling within 24 hours of catheter placement) the standard!

 2014年より Urgent Strat PD(カテーテル留置から24時間以内の貯留開始)を行ってきましたが、とくに問題なく、緊急導入や入院期間短縮に役立っています。

こちらの研究でも、24時間以内の貯留開始でリークや感染の増加は見られなかったと結論しています。Feasibility of a break-in period of less than 24 hours for urgent start peritoneal dialysis: a multicenter study Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Renal Failure

2019年のISPDガイドライン 腹膜透析アクセス造設と維持に関するガイドラインにおいて、リークリスクを最小化するために、カテーテル留置術2週間後からの貯留を推奨しているため、いまだにUrgent Strat PDを採用していない病院も多いようですが、間違っています。

CREATING AND MAINTAINING OPTIMAL PERITONEAL DIALYSIS ACCESS IN  THE ADULT PATIENT: 2019 UPDATE

PERITONEAL LEAKAGE AND MANAGEMENT

l  We recommend that initiation of dialysis following catheter placement be delayed for 2weeks when possible to minimize the risk of leaks (1B)

l  We recommend that acute and urgent start of PD <2 weeks following catheter placement utilize a recumbent, low-volume, intermittent dialysis regimen, leaving the peritoneal cavity dry during ambulatory periods to minimize the risk of leak (1C)

l  We recommend the use of CT peritoneography or peritoneal scintigraphy to investigate suspected peritoneal boundary dialysate leaks (1A)

最近のUrgent Strat PD(USPD)についての文献をまとめておきましょう

2017年からUrgent Strat PD を取り入れているブラジルからの興味深い報告

Urgent Strat PDによる導入を開始してから、なんと、3年間でPD患者数が256%と驚異的に増加したそうです

Urgent-start dialysis: Comparison of complications and outcomes between peritoneal dialysis and haemodialysis.

Dias DB, Mendes ML, Caramori JT, Falbo Dos Reis P, Ponce D.

Perit Dial Int. 2021 Mar;41(2):244-252. doi: 10.1177/0896860820915021. Epub 2020 Mar 30.

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0896860820915021

PD患者増加には、やはり、Urgent start PDによるスムーズな導入が鍵になっているようです

Urgent-Start Peritoneal Dialysis: The First Year of Brazilian Experience.

Bitencourt Dias D, Mendes ML, Burgugi Banin V, Barretti P, Ponce D.

Blood Purif. 2017;44(4):283-287.

カテーテル挿入はタイのベッドサイド挿入と同じ方法

http://www.jmatonline.com/files/journals/1/articles/1495/public/1495-4560-1-PB.pdf

腎臓内科医による挿入

局麻下経皮セルジンガー法

正中もしくは傍腹直筋アプローチ

コイル型カテーテル

深部カフのタバコ縫合なし、腹直筋前鞘前面に留置

彼らは72時間以内にHigh volume PD (30ml/kg)の透析液貯留を行うそうです

カテーテルトラブルは多い印象

外科的修復を要したカテーテル位置異常 8/51 15.6%

リーク 4/51 7.8%

興味深いのは、退院後は手技取得まで透析センターで隔日8-10hAPDトレーニングを行うそうです(夜間?)

日本も夜間は透析室ベッド空いてるので、オーバーナイトPDトレーニングもありですね


2020年にCochrane ReviewでもUrgent Start PDを支持するレビューとなっています

https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD012913.pub2/epdf/full

 

タイから緊急導入でも問題なくできるという内容の論文

June 10, 2022 Kidney International Reportsにタイのマハラトナコンラチャシマー病院からの2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群を比較した論文

https://www.kireports.org/article/S2468-0249(22)01434-6/fulltext

この病院は1680床もあるタイの巨大基幹病院のようです

201811月から20202月、緊急透析導入の必要な成人207人を対象

2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群の比較

導入6週目の死亡率に差はなく、複合的合併症は37% vs 19%、透析関連合併症 24% vs 4% Urgent Start PD群のほうが少なかった

結論として、緊急透析導入もUrgent start PDで問題なくできるということです

カテーテル留置は年間30例以上3年以上の手術経験のあるベテラン腎臓内科医によって局麻下セルジンガー法で留置

タイは痩せているひとが多いのでテンコフ留置は容易だろうなと想像

また、腎臓内科医がカテ留置を行うので、外科コンサルが不要で、緊急導入時に即座にカテ留置できる背景もあるようです

貯留量は8001000mlを仰臥位で開始し、2週間以内に1.5-2.0Lまで貯留量を増加

導入期CAPD5/週とされていています、公的病院なので土日は公務員は働かないのかな?

リークはやはりUrgent Startのほうが7/104と多い(HD→PD2/103)ようですがなんとかなったと書いてありますね

セルジンガーなのでこのくらいのリークはしょうがないでしょうね

ちなみに私どもが最近開発したミニマム創でリークはゼロです

 

アメリカでは2019年にThe Advancing American Kidney Health (AAKH) Executive Order(大統領令)やここ数年のCOVID-19パンデミックによって在宅透析普及が加速しています

スムーズな導入のキーになるのはUrgent start PD(カテ留置から24時間以内の導入)ここ数年のホットトピックになっています

2014年よりUrgent start PDを取り入れてきましたがまったく問題ありませんでした

海外ではオペ室と外科医や麻酔科医のチャージが高額なことも背景にあるようですが、途上国ではベッドサイドでの経皮セルジンガー法が行われている国も多いです

NHS 2014 Data Baseによると英国では腹膜透析カテーテル留置術の比率は下記のようになっていました

外科的                  38.1

腹腔鏡下                 18.1

経皮的                     28.3

 

PDファーストのタイからの経皮セルジンガーカテーテル挿入&Urgent start PDの報告

Urgent start HD → PD よりも Urgent start PD のほうが合併症が少なく臨床成績も良好という報告

Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure. Parapiboon W, et al. Kidney Int Rep.2022

日本は病院資源が豊かで(とくに金銭面での)オペ室使用のハードルが低いので、ベッドサイドにこだわらなくてもよいとは思います

また、日本は医療事故に対する医療訴訟環境が世界最悪なので、医療安全第一がもとめられることもあります

いずれにせよ、Urgent start PDにより短期間のスムーズな導入が可能になることで、PD導入のハードルが下がることは間違いないようです(自験も含めて)

経皮セルジンガー法によるカテーテル留置も症例を選んでおこなってみてもよいでしょう。最近、開発したミニマム創(創長2-3cm)テンコフカテーテル留置術がより有力な手術手技になると考えています。

Refference

CREATING AND MAINTAINING OPTIMAL PERITONEAL DIALYSIS ACCESS IN  THE ADULT PATIENT: 2019 UPDATE

Cochrane Review Urgent Start PD 2020

Feasibility of a break-in period of less than 24 hours for urgent start peritoneal dialysis: a multicenter study Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Renal Failure

1.     Analysis of mechanical complications in urgent-start peritoneal dialysis Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Journal of Nephrology

2.     Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure Volume 35, pages 1489–1496, (2022) KI REPORT

3.     Feasibility of a break-in period of less than 24 hours for urgent start peritoneal dialysis: a multicenter study Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Renal Failure

4.     Urgent-start peritoneal dialysis: Association with outcomes Volume 35, pages 1489–1496, (2022) PDI

5.     Urgent vs. planned peritoneal dialysis initiation: complications and outcomes in the first year of therapy Braz. J. Nephrol. 44(4) Oct-Dec 2022

R   Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure. Parapiboon W, et al. Kidney Int Rep.2022







2024年12月23日月曜日

Double purse-stringテクニック

タバコ縫合を2重にかける、Double purse-stringテクニックを行うことがリーク予防に有効です

私はルーチンに行うようにしています

偶然ですがミラノ大学も同じ手術手技を行っていて論文化していました Double purse-string around the inner cuff of the peritoneal catheter: A novel technique for an immediate initiation of continuous peritoneal dialysis. Scalamogna A, Nardelli L, Zanoni F, Messa P. Int J Artif Organs. 2020 Jun;43(6):365-371. doi: 10.1177/0391398819891735. Epub 2019 Dec 19.

Urgent Strat PD

 私は、2014年よりUrgent Strat PD(カテーテル留置から24時間以内の貯留開始)を採用してきました

文献をまとめておきます

2017年からUrgent Strat PD を取り入れているブラジルからの興味深い報告

Urgent Strat PDによる導入を開始してから、なんと、3年間でPD患者数が256%と驚異的に増加したそうです Urgent-start dialysis: Comparison of complications and outcomes between peritoneal dialysis and haemodialysis. Dias DB, Mendes ML, Caramori JT, Falbo Dos Reis P, Ponce D. Perit Dial Int. 2021 Mar;41(2):244-252. doi: 10.1177/0896860820915021. Epub 2020 Mar 30. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0896860820915021 PD患者増加には、やはり、Urgent start PDによるスムーズな導入が鍵になっているようです Urgent-Start Peritoneal Dialysis: The First Year of Brazilian Experience. Bitencourt Dias D, Mendes ML, Burgugi Banin V, Barretti P, Ponce D. Blood Purif. 2017;44(4):283-287. カテーテル挿入はタイのベッドサイド挿入と同じ方法 http://www.jmatonline.com/files/journals/1/articles/1495/public/1495-4560-1-PB.pdf 腎臓内科医による挿入 局麻下経皮セルジンガー法 正中もしくは傍腹直筋アプローチ コイル型カテーテル 深部カフのタバコ縫合なし、腹直筋前鞘前面に留置 彼らは72時間以内にHigh volume PD (30ml/kg)の透析液貯留を行うそうです カテーテルトラブルは多い印象 外科的修復を要したカテーテル位置異常 8/51例 15.6% リーク 4/51例 7.8% 興味深いのは、退院後は手技取得まで透析センターで隔日8-10hのAPDトレーニングを行うそうです(夜間?) 日本も夜間は透析室ベッド空いてるので、オーバーナイトPDトレーニングもありですね

2020年にCochrane ReviewでもUrgent Start PDを支持するレビューとなっています https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD012913.pub2/epdf/full タイから緊急導入でも問題なくできるという内容の論文が出ました June 10, 2022 Kidney International Reportsにタイのマハラトナコンラチャシマー病院からの2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群を比較した論文 https://www.kireports.org/article/S2468-0249(22)01434-6/fulltext この病院は1680床もあるタイの巨大基幹病院のようです 2018年11月から2020年2月、緊急透析導入の必要な成人207人を対象 2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群の比較 導入6週目の死亡率に差はなく、複合的合併症は37% vs 19%、透析関連合併症 24% vs 4% とUrgent Start PD群のほうが少なかった 結論として、緊急透析導入もUrgent start PDで問題なくできるということです カテーテル留置は年間30例以上3年以上の手術経験のあるベテラン腎臓内科医によって局麻下セルジンガー法で留置 タイは痩せているひとが多いのでテンコフ留置は容易だろうなと想像 また、腎臓内科医がカテ留置を行うので、外科コンサルが不要で、緊急導入時に即座にカテ留置できる背景もあるようです 貯留量は800-1000mlを仰臥位で開始し、2週間以内に1.5-2.0Lまで貯留量を増加 CAPDは5日/週とされていています、公的病院なので土日は公務員は働かないのかな?

リークはやはりUrgent Startのほうが7/104と多い(HD→PD2/103)ようですがなんとかなったと書いてありますね セルジンガーなのでこのくらいのリークはしょうがないでしょうね 私どもは小開創でduble purse-stringなのでリークはゼロです


アメリカでは2019年にThe Advancing American Kidney Health (AAKH) Executive Order(大統領令)やここ数年のCOVID-19パンデミックによって在宅透析普及が加速しています スムーズな導入のキーになるのはUrgent start PD(カテ留置から24時間以内の導入)ここ数年のホットトピックになっています 私どもも10年前よりUrgent start PDを取り入れていてまったく問題ありませんでした オペ室と外科医や麻酔科医のチャージが高額なことも背景にあるようですが、海外ではベッドサイドでの経皮セルジンガー法が行われている国も多いです 経皮セルジンガー法でUrgent start PD大丈夫?という疑問に対して 前回、PDファーストのタイからの経皮セルジンガーカテーテル挿入&Urgent start PDの報告を紹介しました Urgent start HD → PD よりも Urgent start PD のほうが合併症が少なく臨床成績も良好という報告 Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure. Parapiboon W, et al. Kidney Int Rep.2022 日本は病院資源が豊かで(とくに金銭面での)オペ室使用のハードルが低いので、ベッドサイドにこだわらなくてもよいとは思います また、日本は医療事故に対する医療訴訟環境が世界最悪なので、医療安全第一がもとめられることもあります いずれにせよ、Urgent start PDにより短期間のスムーズな導入が可能になることで、PD導入のハードルが下がることは間違いないようです(自験も含めて) 経皮セルジンガー法によるカテーテル留置ももっと取り組んでみてもよいでしょう

セルジンガー法によるPDカテ留置

 1991年 セルジンガー法によるPDカテ留置はBryn Mawr Hospital PennsylvaniaのAnthony R. Zappacostaらによって紹介され(ASAIO transaction 1991; 37: 13-15)、東南アジアでは90%、アメリカでも50%程度、私も症例を選択して行うこともあります

とくに目新しい手技ではないのですが、シースやガイドワイヤーの医材請求ができないので、やり慣れた小開創法でささっとやってるのが現状です セルジンガー法の欠点として ①穿刺角度45度程度なのでカテーテル寝かせることができないため位置異常がおきやすいかも(論文上は大丈夫となっているが・・・Percutaneous versus surgical insertion of PD catheters in dialysis patients: a meta-analysis JVA 2015 16(6)498-505) ②だからカテーテルはストレートよりコイル型が無難? ③下腹壁動静脈損傷時の止血操作が小開創と違いすぐにはできないので術前抗凝固剤中止が必要? ③巾着縫合を行わないのでUrgent start PDが難しい?ピールアウェイシース16→14Frなら大丈夫? このあたりは症例数を重ねるとわかってくるでしょう いずれにせよ、医材請求できる挿入キットが発売されれば、セルジンガー法は日本でもかなり普及するのではないでしょうか おまけ シリア人のアメリカカルフォルニア在住Dr Entabiさんのベンチャーが発売しているキット Entabi PD Pack https://www.entabiinnovation.com/peritoneal-dialysis-kit

島田市民病院腎臓内科さんのエクセレントなユーチューブ動画 手技動画 https://www.youtube.com/watch?v=jTWvmv9HHWk 補足説明 https://www.youtube.com/watch?v=ClN1yft5zZA

Peritoneal Dialysis Catheter Complications after Insertion by Surgeons, Radiologists, or Nephrologists Ku, Elaine et. al. Journal of the American Society of Nephrology 35(1):p 85-93, January 2024.

 PDカテーテル留置術の術者によってカテーテルトラブル発生率はかわるのか?

Peritoneal Dialysis Catheter Complications after Insertion by Surgeons, Radiologists, or Nephrologists Ku, Elaine et. al. Journal of the American Society of Nephrology 35(1):p 85-93, January 2024. | DOI: 10.1681/ASN.0000000000000250 https://journals.lww.com/jasn/fulltext/2024/01000/peritoneal_dialysis_catheter_complications_after.9.aspx 2010年から2019年にメディケア患者で初回のPDカテーテルを挿入した46,973名の患者を対象 対象術者は5205名(内訳は 71.7%一般外科医 17.2%血管外科医 9.7%放射線科医 2.0%内科医) 術者のバックグラウンドと90日以内のカテーテル抜去、交換、再手術の関連を見た研究 15.5%で留置後90日以内にカテーテル不全に対する対応が必要だった 内訳は修復5.9%、抜去6.6%、再留置2.9% 一般外科医をreferenceとしたところトラブルの起こしやすさは内科医がHR1.86*, 放射線科医1.36*, 血管外科医1.06 (*は統計学的有意) 主解析にはMixed effects logistic modelを用いており、術者をランダム効果として扱ってクラスタリングしている この結果によって内科医はPDカテーテル留置をするべきでないとはならないと思います 日本ではPDカテーテル留置術の20-25%くらいは腎臓内科医が行っていますが非常に安定した手術手技であると思います むしろ、日本ではカテーテル留置経験の少ない外科系医師によるカテーテル留置術後トラブルのほうが多い印象すらあります アメリカの15.5%で何らかのredo(再手術)というのもあまりにも高率で驚きますが、術式による違いを反映しているのかどうなのか、さらに知りたいところです

シリコーンカテーテルとヨードについて テンコフカテーテル出口部のイソジン消毒に関する考察 Silicone Catheters and Iodine. Considerations for Iodine Disinfection of Tenchoff Catheter Exit Site.

私どもは、下記のような感染リスクの高い患者には、イソジンゲルを出口部処置にルーチンで使用 しております 低栄養・ 緊急導入・ 高度尿毒症・ 糖尿病・ ステロイド・ 超高齢など しかしながら、テンコフカテーテル添付文書に、下記のように書かれており、イソジンの使用は大丈夫なのかと、よ...