2026年10月13日火曜日

永寿総合病院緩和ケア医 廣橋猛先生の良記事 「透析だけは絶対にしない」と言われたらどうする?

 2026/10/1 M3 連載:二刀流緩和ケア医が考えたこと 永寿総合病院緩和ケア医 廣橋猛先生の良記事 「透析だけは絶対にしない」と言われたらどうする? membersmedia.m3.com/articles/17775

80代男性の透析拒否事例をあげ、実臨床に近い視点からの素晴らしい論考です。
透析医療の本質は症状緩和にあります。
血液透析も腹膜透析も腎臓の代替療法とはいっても腎臓的な要素は殆どありません。
基本的に透析療法は半透膜療法でしかないのです。

透析医療は、患者が尿毒症や呼吸不全に陥り、苦痛のあまり尊厳を失なわぬようサポートすることこそにその本質があるのです。
とくに、余命が限られている高齢者においては、とくに強調されるべき点です。
残された時間に、やっておきたいこと、例えば、行っておきたいところへの旅行、食べておきたいもの、離別していた友人・家族との再開や和解など、限られた時間にやっておきべきことがたくさんあるはずなのです。

学会などで最近よく見かける、腎不全終末期緩和ケアにおける机上の空論に違和感を覚えている多くの医療者が共感できる内容です、ぜひ一読ください。
以下、抜粋
拒否したのは、通院、穿刺、透析後の倦怠感、そして妻への負担…すなわち説明された唯一の選択肢である「血液透析」だったのかもしれません。
腹膜透析(PD)も、保存的腎臓療法(CKM)も知らないままの拒否でした。選択肢がひとつなら、選んだことになりません。
自施設で提供できない治療でも、患者に知らせなくてよいことにはなりません。
CKMを選ぶ場合も、急変時の方針や療養場所の準備が要ります。
説明の不足は、患者から準備の時間を奪うのです。 選べない患者は、救急搬送を繰り返してしまう。
まず考えるべきは、「この苦痛は、腎代替療法(KRT)で改善できないか。
治療を選ぶとは、どこで、誰と、どう過ごすかを選ぶことなのです。
廣橋 猛 先生のHP
hirohashi-takeshi.com

2026年10月1日木曜日

プレシジョン腹膜透析

 腹膜透析というと血液透析に比べて、なにを指標に患者さんごとの透析処方調整をおこなうのか、よくわからないと聞くことがあります。

ファジーなところも腹膜透析の良いところではありますが、患者さんごとの遺伝子情報・体質・環境・生活習慣の違いなどに基づいた治療戦略を精密に行う【プレシジョン】医療によってより優れた治療になると予測されています。


プレシジョンPD についてよくまとまった総説がございましたので解説しておきます。

Current clues towards precision peritoneal dialysis 

Clinical Kidney Journal, Published: 25 September 2026

https://doi.org/10.1093/ckj/sfag331

1. 3ポアモデルと機能的表現型

•    輸送メカニズム:溶質および液体の交換は、拡散、限外濾過、対流によって行われ、3つの異なる毛細管細孔群をモデル化しています:

Large Pores(25~30 nm):高分子(例:タンパク質)の漏出を許容します。

Small Pores(4–5 nm):小分子溶質の拡散および部分的な液体の移動を媒介する。

Ultrasmall Pores(<0.3 nm):アクアポリン-1(AQP1)チャネルのみによって形成され、クリスタロイド浸透圧によって駆動される溶質を含まない水の輸送を促進し、総限外濾過量の最大50%を占める。

•    PET フェノタイピング:4時間の腹膜平衡試験(PET)により標準化され、患者は輸送能が高い群、高~中程度群、低~中程度群、および低い群に分類される。輸送能が高い患者はグルコースを急速に吸収し、浸透圧勾配を早期に解消するため、限外濾過不全(UFF)、体液過剰、および心血管死率の上昇を招きやすい。

2. 肉眼的・構造的決定要因

•    充填量対腹腔内圧(IPP):透析液の充填量を増やすと接触面積が拡大し、非線形の体積乗数比に従って、ある臨界閾値までクリアランスが向上する。しかし、充填量が過剰になると腹膜内圧(IPP)が上昇(>16 cm H2 O)し、これにより腹膜下毛細血管が圧迫され、リンパ液の再吸収が増加し、これが透析法失敗の独立した予測因子となる。

•    有効腹膜表面積(EPSA):透析液と直接接触している、動的に灌流されている腹膜下毛細血管のサブセットを表す(解剖学的総面積の30~60%)。腹膜クリアランスの日ごとの変動は、膜の固有の透過性よりも、主にEPSAの変化によって引き起こされる。

•    ADPKDの適応可能性:大規模な多施設共同コホート研究により、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)はPDの禁忌ではないことが確認されている。ADPKD患者は、腹膜炎の発生率が増加することなく、非ADPKD対照群と同等の技術的生存率および患者生存率を達成している。

3. 血管および生理学的要因

•    新生血管形成および微小血管密度(MVD):透析前のベースラインMVDが高いほど、患者は「fast transport phenotype」の表現型になりやすい。高グルコース含有の生体不適合性透析液への慢性的な曝露は、VEGFによる新生血管形成を誘導し、グルコースの急速な吸収のための毛細血管表面積を拡大させ、長期的なUFFの主要な構造的原因となる。

•    リンパ吸収:横隔膜下リンパ管を介した腹腔内液の排出は、滞留期間中の正味限外濾過量を最大73%まで減少させる。ベースライン時のリンパ吸収量が高い場合、毛細血管透過性の水移動が正常であってもUFFを引き起こす可能性がある。

•    局所性炎症および糖尿病性腎症(DKD):既存の微小炎症(例:全身性のIL-8上昇、または局所的なIL-6/TNF-αの上昇)が血管作動性メディエーター(NO、PGE2)の放出を誘発し、急性血管拡張を引き起こしてEPSAを拡大させる。DKD患者は、既存の微小血管障害を有し、ベースラインの輸送率が高い。

4. 分子、遺伝的、およびエピジェネティックな指標

•    AQP1プロモーター変異:一般的なプロモーター変異であるrs2075574(TT遺伝子型)は、正味限外濾過量の減少および死亡または透析法失敗の複合リスクの上昇と関連している。高リスクのTT遺伝子型を持つ患者は、AQP1に依存しない小孔を介して作用するイコデキストリンなどのコロイド浸透圧剤の恩恵を受ける。

•    グルコース輸送体およびタイトジャンクション:透析液への慢性的な曝露により、SGLT2およびGLUTの発現が上昇し、グルコースの再吸収が促進される。タイトジャンクションタンパク質は細胞間拡散を維持する。クラウディン-2は溶質輸送速度を独立して予測する一方、排液中のクラウディン-1およびオクルディンのレベルは膜の完全性を反映する。

•    主要な遺伝的多型:

o 炎症:IL-6 -174G/C(CC/GC遺伝子型は膜透過性が高い)。

o   血管新生:VEGF(rs3025039 CC遺伝子型)およびKDR(rs2071559 AA遺伝子型)は、ベースラインでの輸送速度の加速と相関する。

o 線維化:TGF-β1 rs1800471のG対立遺伝子は被膜性腹膜硬化症(EPS)のリスクを高める一方、C対立遺伝子は保護作用を持つ。

•    液体生検バイオマーカー:マイクロRNAは線維化を調節する(線維化促進性のmiR-21およびmiR-503-5p対、線維化抑制性のmiR-29bおよびmiR-200a)。AQP1を運ぶ透析液排出液中の細胞外小胞(EVs/エクソソーム)は、組織学的完全性を反映する非侵襲的な「リキッドバイオプシー」として機能する。

5. プレシジョンPDおよびAI分析への移行

•    多層的な精密フレームワーク:解剖学的・物理的指標(IPP、充満量)、生理学的パラメータ(MVD、リンパ流速)、分子・遺伝的プロファイル(AQP1変異体、排出EV)を統合する。

•    機械学習と導入の障壁:機械学習モデル(例:動的生存予測のためのPD-PREDICTやUFF予測のためのMAUXI)は、複雑なマルチオミクスデータを臨床的意思決定支援へと変換するのに役立ちます。主な実用上の課題としては、検査費用の高さ、標準化されたEV単離プロトコルの欠如、主要な学術機関以外での利用が限られていることなどが挙げられます。








2026年9月29日火曜日

不適切な腎代替療法説明シリーズ 【移植腎廃絶後に腹膜透析を希望したが医学的に不正確な説明をされたケース】

腹膜透析が選択されない大きな原因の一つは、不適切な説明といわれています。
ひどいときには腹膜透析の説明自体がまったくなされていないことも珍しくありません。
腹膜透析が説明されない理由は、医療者の知識・経験不足が背景にあると指摘されています。

適切な腎代替療法教育を受けると、50%以上が腹膜透析を選択することが示されています。
Transplant Proc  2019 Jun;51(5):1321-1324. 
高齢化社会の進んだ我が国では、もっと選択されても良いはずです。
じっさい、私のクリニックでは、治療法と訪問看護利用について丁寧に説明すると、75歳以上の高齢者では、90%以上が腹膜透析を選択されます。

あきらかに不適切な腎代替療法説明を乗り越え当院で腹膜透析を導入したケースは数え切れないほど経験してきました。
【不適切な腎代替療法説明シリーズ】として、問題提起を兼ねて、備忘録的に記録を残しておこうと思います。

【移植腎廃絶後に腹膜透析を希望したが医学的に不正確な説明をされたケース】
30台女性、生体腎移植術12年目 移植腎廃絶し、透析導入が必要となった
針に刺されるのが苦手、自宅でできる腹膜透析を希望したところ、担当医からは「残存腎機能がないためすぐに腹膜炎になるから出来ない」と説明され断念、内シャント造設を行ったところで、まつもとクリニックホームページをみてメールで相談がありました

「まったく問題なくできます!」、と即答させていただきました
担当医の説明には全く根拠がありません、近隣の腹膜透析に詳しい医師を紹介させていただきました
わたくしのところでも、移植腎廃絶後の腹膜透析をされている患者さんがおられますがお元気に過ごされています

かかりつけ病院のホームページを見ると、担当医は、透析専門医・指導医、腹膜透析認定医などの肩書が並んでいますが、実態はこのようなことで実力がなくても専門医。指導医を名乗れてしまう困った制度なのです
しかし、勉強不足なうえに、医学的に根拠のない説明を堂々とされるのはいかがかと思います

最近の研究でも移植腎廃絶後の腎代替療法は、血液透析も腹膜透析も成績は同じと報告されていますので紹介しておきましょう
腎移植後の移植腎機能廃絶例における腹膜透析の有効性と安全性 2026 Renal Failure
スペインのアンダルシア州で行われた45年間にわたる1万1,718例を対象
生存率の同等性: 移植腎機能が廃絶した後に透析を再開する患者において、腹膜透析(PD)を選択した場合でも血液透析(HD)と同等の患者生存率が示されました
安全性と技術生存率: 移植歴のない通常の腹膜透析患者と比較しても、移植腎廃絶後にPDを選んだ患者の技術生存率(PDを継続できる期間)や腹膜炎の発症率に有意な差はみられませんでした
Renal replacement therapy after kidney graft loss: redefining the role of peritoneal dialysis
Ren Fail 2026 Dec;48(1):2641975.
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0886022X.2026.2641975

経験がなければ経験豊富な医師を紹介するべきなのですが、基幹病院の医師としてのプライドが邪魔をするのでしょう、ひどい場合は病院経営のために血液透析へ誘導しているとしか考えられないケースもあります

患者はもっと賢くなって、大切な決定を行うときは、担当医を盲信せず必ずセカンドオピニオンを求めるようにしましょう

2026年8月19日水曜日

不適切な内シャントPTA 日本には善意の内部告発者(ホイッスルブロワー)はいないのか?

 私は以前より高齢者の内シャント閉塞は生理的生体防御反応であると考えています。そして、高齢者においては内シャントPTAを反復するのはやめて、腹膜透析に切り替えるべきと主張しています。
また、近年の都市部を中心とした内シャントPTA件数の異常な増加には、営利目的の過剰な治療提供が存在しており、厳格な監査適正化が必要と考えています。
アメリカでは内シャントPTAの不正請求が厳しく取り締まられてきましたが、その背景は、日本と酷似しており、紹介したいと思います。

アメリカの透析治療(特に内シャントなど血管アクセスの管理・手術)を巡っては、医療機関や専門クリニックが利益を最大化するために不要な手術や検査を繰り返し、政府の公的医療保険(メディケアなど)へ不正請求(詐欺行為)を行っていたとして、司法省(DOJ)から巨額の賠償金・和解金の支払いを命じられる事例が多発しています。
Vascular Practice and Physician Agree to Pay More Than $6.73M to Settle False Claims Act Allegations of Unnecessary Vascular Interventional Procedures

1. 主な不正請求の手口
透析患者が血液透析を行うために作られる「内シャント(動静脈瘻)」などの血管アクセスは、詰まりや狭窄を起こしやすいため定期的な管理が必要です。悪質なクリニックはここを悪用し、以下のような手口で不正請求を行っていました。
2. 代表的な巨額賠償・和解事例
アメリカでは、内部告発者(ホイッスルブロワー)が政府に代わって訴訟を起こすことができる「虚偽請求取締法(False Claims Act)」が強力に機能しており、以下のような高額な和解が成立しています。
摘発・和解時期対象となった医療機関・医師和解金・賠償金の額主な不正内容
2026年5月セラーノ腎臓・血管アクセスセンター(Dr. Feliciano Serrano)約673万ドル
(約10億円)
医学的基準を満たさない血管アクセス処置の実施、および狭窄度の誇張による虚偽請求。
2018年10月バスキュラー・アクセス・センターズ(VAC)最低3,825万ドル 〜 最大1,830万ドル
(最大約27億円)
メディケアの補償対象外である血管手術の請求、および請求を正当化するための医療記録の偽造。
2014年以降
(現在も係争中)
フレゼニウス・バスキュラー・ケア(Fresenius Vascular Care)各州および連邦政府から巨額の民事訴訟末期腎不全患者に対し、利益獲得とノルマ達成のために、不要なシャント手術や造影検査を組織的に繰り返した疑い。
(参考・過去)アメリカン・アクセス・ケア(AAC)120万ドル
(約1億8,000万円)
医学的に不要な血管拡張術(PTA)および血栓除去術の実施、過剰な回数の請求。
※日本円換算は目安です。







3. なぜこのような不正が起こるのか?
  1. 高い利益率
    透析そのものよりも、シャントのトラブルを治療する外科的・放射線科的処置(カテーテル治療など)の方が、医療機関にとって1回あたりの報酬・利益率が高く設定されているため、過剰診療の誘因になりやすい状況があります。
  2. 患者の脆弱性
    透析患者(特に高齢者や低所得者層)は週に何度も通院しており、医師の指示を拒否しにくいため、不要な手術であっても「シャントを長持ちさせるため」と言われると受け入れてしまう傾向にあります。
     
4. 社会的・医療的な問題点
司法省や各州の司法長官は、これらの不正請求を「単なる経済的犯罪(税金の泥棒)」としてだけでなく、「患者を過剰な麻酔や感染症、血管破裂などの重大な医療リスクにさらす悪質な行為」として厳しく非難し、摘発を強めています。

我が国においても内シャント治療が不適切に提供されていないのか自省する必要があります。じっさい、内シャント治療は病院のドル箱になっていますので、アメリカ同様に営利追求のツールになってしまっているのが現実です。


令和8年度診療報酬改定では、その他の場合として安い診療報酬が新設されました、この背景には内シャントPTA件数の異常な伸びに対する警鐘が込められています。
経皮的シャント拡張術・血栓除去術(VAIVT)
初回(透析シャント閉塞または高度狭窄):12,000点
初回(その他の場合):9,840点
2014年には11万件/年であった内シャントPTA件数は、急激に増加し、2023年にはなんと25万件/年まで、内シャントPTA件数が不自然に増加しています。

診療報酬データベースに基づく、2014年から2024年の内シャントPTAの県別増加率をみてみましょう。
埼玉、東京、大阪では、2014年から2024年の内シャントPTA件数増加率がなんと300%超えになっています。
この異常な増加が適切なものなのかについては精査が必要ですが、地域差からみても受け入れがたいものがあります。


  私は以前より高齢者の内シャント閉塞は生理的生体防御反応であると考えています。そして、高齢者においては内シャントPTAを反復するのはやめて、腹膜透析に切り替えるべきと主張しています。
 1966年に発表されたBrescia-Cimino 内シャントによって、安定したバスキュラーアクセスが可能となり、維持血液透析への道が開かれました。しかし、現在のような透析患者の高齢化とそれに伴う諸問題は、当時は予測すらしていなかったことでしょう。
 近年、内シャントは、心不全の一因であると考えられるようになっています。体毛細血管とそれに関連する血管抵抗 (SVR) をバイパスするため、心拍出量 (CO) の増加に直接寄与し高出力心不全を容易に引き起こしてしまうためです。特に、人工血管や肘部内シャントは高流量になりやすく、心不全リスクが高まります(1)。
 過剰シャント血流による弊害は、心不全だけでなく、脳虚血・脳うっ血にも及び、認知症にも影響があることが指摘されています(2)。透析患者には認知症が多いことが知られていますが、高齢者にとっては医原性認知症の原因として看過できない問題です。しかしながら医療者の認識も不十分なため、とうぜん患者には説明されていないことが多いのです。
 高齢者の内シャント狭窄は、不自然に流れないで欲しいという、正常な生体防御反応と捉えるべきなのです。
 内シャント過剰血流やアクセス不全の対応策として、高齢者においては血液透析から腹膜透析への療法変更も検討すべきです。
 自験例でも、過剰血流内シャントによる心不全患者に腹膜透析を導入し、内シャント結紮を行うことで、心機能が改善するのみならず、頚動脈血流も増加し認知症状改善を認めた症例を複数経験しています。肝硬変難治性腹水患者では肝動脈血流量が改善し、腹水も減少します。
 腹膜透析は、在宅療養が容易であり、循環動態に与える影響も少なく、患者・介助者・医療者のすべてにおいて穏やかなケアを可能とします。血液透析からの切り替えも容易にできますので、もっと患者さんご家族に正確な情報が伝わり、選択しやすいようになってほしいものです。
(1) Rao N.N., Dundon B.K., Worthley M.I., Faull R.J. The impact of arteriovenous fistulae for hemodialysis on the cardiovascular system. Semin Dial. 2016;29:214–221.
(2) Findlay MD, Dawson J, Quinn T, Mark PB. Investigating the Relationship between Cerebral Blood Flow and Cognitive Function in Hemodialysis Patients. J Am Soc Nephrol. 2019 Jan;30(1):147-158. 





2026年6月22日月曜日

介護保険認定の取り下げについて Withdrawal of Long-Term Care Insurance Certification

 介護度の低い患者さんで介護保険が足かせになりアシストPDケアプランが策定困難、もしくは導入後ADL改善によって介護保険サービス不要になった場合、介護保険は取り下げ、医療保険に切り替えたほうが良いケースがあります。 とくに、頻回の訪問看護サービスが必要なアシステッドPDにおいては、医療訪看の活用が必要になる場面が多いと思います。

ご存知の通り、特別訪問看護指示書は「頻回な訪問看護が必要である」と医師が認めたときに限り交付可能で下記のようなケースに限られており、ケアマネや訪問看護に連続交付を依頼されることがありますが、連続交付は原則として認められていません。

  • 急性増悪時(急性感染症など)
  • 末期の悪性腫瘍等以外の終末期
  • 退院直後
「漫然とした」特別訪問看護指示書の発行は、厚生労働省が定める監査・指導において最も厳しくチェックされる項目の1つです。
明確な医学的根拠や状態の悪化がないにもかかわらず、高頻度の訪問を継続する目的で指示書が発行された場合、不正請求や算定要件違反とみなされ、診療報酬返還が指示されることがあります。

以前、要介護認定の取り消しについては対応が各市町村で迷走していた時期がありましたが、 平成30年度診療報酬改定時のQ&Aにて認める旨の厚生労働省の疑義照会返答あり、各市町村で対応可能となっています。

背景には介護保険財政負担増に伴い、介護度改善(によって介護保険利用が減ること)が評価されるようになったことがあげられます。 https://gemmed.ghc-j.com/?p=31058

市町村窓口担当者やケアマネに周知徹底されていないこともあるようですので、下記の根拠を伝えてみてください。
平成30年度診療報酬改定時のQ&A(18.9.11 老人保健事業及び介護予防事業等に関する Q&A (追加・修正) vol.2 〔3〕) 要支援・要介護認定を受けている者が、自主的に認定の取下げを届け出た場合は、特定高齢者と見なすことができるが、この取扱いについては、介護保険法第31条及び第34条に規定する要介護認定等の取消として取り扱うものである。 取り消し届け出のひな型も最後のページにありますので参考にしてみてください https://www.wam.go.jp/wamappl/26KYOTO/26bb01kj.nsf/6b16380d97f55135492567d0000714b4/0abd724ba2b0031b492571e80006e067/$FILE/%E8%80%81%E5%81%A5%E5%8F%8A%E3%81%B3%E4%BA%88%E9%98%B2Q&A(vol2)(860KB).pdf 市町村によっては申請書ひな型をHPに上げてるところもあります 鹿児島市 要介護(要支援)認定を受けている人が、医療対応等の理由により認定の取消しを希望する場合に提出していただく申請書です。 http://www.city.kagoshima.lg.jp/kenkofukushi/chouju/kaigohoken/kenko/fukushi/kaigo/download/shinse-10.html 神戸市 要介護(要支援)認定の有効期間中に、状態が改善した等の事情により、介護サービスを利用する予定がなくなるなど認定自体が不要となった場合は、認定の取下げ手続きを行います。 https://www.city.kobe.lg.jp/a46210/kenko/fukushi/carenet/nintei_guide/shinseidaikou_c10.html 介護保険の認定取り下げによって担当ケアマネが外れることを心配する声もありますが、もともと介護が低いケースでは介護保険利用するよりも、介護用具リースや地域生活支援事業を活用しながら別表8在宅透析による医療訪看を活用したほうがメリットが大きい場合が多いです


ただし、当然のことながら、ケアマネが担っていたさまざまな生活支援や調整業務について、医療保険に切り替えたのちは、医療者(医師・看護師・MSWなど)が目配りしてゆく必要があります。また、病状推移や老衰が進行して、再度、本当に介護保険が必要となったときの適切な対応・調整も見通しながらケアマネと連携しつつ診てゆくことが求められます。

永寿総合病院緩和ケア医 廣橋猛先生の良記事 「透析だけは絶対にしない」と言われたらどうする?

  2026/10/1 M3 連載:二刀流緩和ケア医が考えたこと 永寿総合病院緩和ケア医 廣橋猛先生の良記事 「透析だけは絶対にしない」と言われたらどうする? membersmedia.m3.com/articles/17775 https:// 80代男性の透析拒否...