2025年6月8日日曜日

シリコーンカテーテルとヨードについて テンコフカテーテル出口部のイソジン消毒に関する考察 Silicone Catheters and Iodine. Considerations for Iodine Disinfection of Tenchoff Catheter Exit Site.

私どもは、下記のような感染リスクの高い患者には、イソジンゲルを出口部処置にルーチンで使用しております
低栄養・緊急導入・高度尿毒症・糖尿病・ステロイド・超高齢など

しかしながら、テンコフカテーテル添付文書に、下記のように書かれており、イソジンの使用は大丈夫なのかと、よくご質問をいただきます。

2.重要な基本的注意  
    (4) 本品をポビドンヨードで長時間浸潤すると早く劣化するので、長時間接触は避けること。
ハヤシデラ PDカテーテル 添付文書 第10版 2024年8月改定
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/04946685133212

 根拠は甲南病院からの古い報告だったと思います
うろ覚えですが、レントゲン不透過マーカーが劣化するとか?議論していた記憶があります
CAPDカテーテルの長期使用における質的形態的問題 1994

結論から述べると、シリコーンカテーテルへのヨード消毒剤の使用は気にせず使って良いと考えております。

まずは、ISPDガイドライン
実は、ヨードについては言及されていません。
そのかわり、ムピロシン軟膏とゲンタマイシン軟膏について記載があります
出口部ケアに連日塗布することを勧めている(1C)のに矛盾していますね
ISPDカテーテル関連感染症に関する勧告:2023年改訂
ムピロシンのポリエチレングリコール基剤がポリウレタン製カテーテルを劣化させる可能性
およびゲンタマイシンクリームがシリコン製カテーテルを劣化させる可能性が報告されており,軟膏やクリームとPDカテーテルとの接触は最小限に抑える必要があることにも注意すべきである(P207 右段)


ヨードによるシリコン劣化の記述は、古いCDCガイドラインに記述がありました
Guideline for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities (2008)の48ページ
ヨウ素またはヨウ素系消毒剤は、シリコンチューブに悪影響を及ぼす可能性があるため、シリコンカテーテルには使用しないように、と記載されているのですが
参照リンクは会社のFAQでしかもすでに削除されていますので、どんなもんかなというところですね
687.Medcomp. Medcomp Frequently Asked Questions. [This link is no longer active:www.medcompnet.com/faq/faq/html], 2000.
Uses. Besides their use as an antiseptic, iodophors have been used for disinfecting blood culture bottles and medical equipment, such as hydrotherapy tanks, thermometers, and endoscopes. Antiseptic iodophors are not suitable for use as hard-surface disinfectants because of concentration differences.
Iodophors formulated as antiseptics contain less free iodine than do those formulated as disinfectants 376.
Iodine or iodine-based antiseptics should not be used on silicone catheters because they can adversely affect the silicone tubing 687.

シリコン内部にヨードが浸透するわけでありませんし、実際、10年以上、イソジンゲルを使用している患者さんのカテーテルを観察しても特に劣化はみられません。
ということで、イソジン消毒液もイソジンゲルも気にせず使用して良いと考えています。

ちなみに、慶応大学中山先生たちより、出口部感染後の出口部ケアにイソジンシュガーを使用すると、再感染HR0.22と非常に有効であることが報告されています
Efficacy of sucrose and povidone–iodine mixtures in peritoneal dialysis catheter exit-site care
BMC Nephrology volume 25, Article number: 151 (2024) 


共同著者である国際医療福祉大学成田病院腎臓内科の内山清貴先生に伺うと、レビュワーからはシリコン劣化についてはとくになにもなく、ヨードの細胞障害性について質問があったそうです
イソジンシュガー(ユーパスタ軟膏)はヨード濃度が3%でありヨードを徐放性に放出するため、ヨードによる細胞障害性は低いと考えており、その観点からも、イソジン消毒液(ヨード濃度10%)よりも適していると考えているそうです。
Topical antimicrobial toxicity
Arch Surg. 1985 Mar;120(3):267-70. doi: 10.1001/archsurg.1985.01390270007001.
Sugar paste and povidone-iodine in the treatment of wounds
J Wound Care. 1996 Sep;5(8):364-5. doi: 10.12968/jowc.1996.5.8.364.

よく出口部処置に使用されているイソジンゲルは処方薬ではありませんので、病院供与もしくは患者購入が必要になっていますが、安価なものではありません(たった5gで456-737円 2025/6/8Amazon)

ユーパスタは適応病名である褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)があれば処方可能ですし、細胞障害性や創傷治癒の側面からもイソジンゲルをやめてユーパスタ軟膏による出口部処置に変更してみようと思いました
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071417





シリコーンカテーテルとヨードについて テンコフカテーテル出口部のイソジン消毒に関する考察 Silicone Catheters and Iodine. Considerations for Iodine Disinfection of Tenchoff Catheter Exit Site.

私どもは、下記のような感染リスクの高い患者には、イソジンゲルを出口部処置にルーチンで使用 しております 低栄養・ 緊急導入・ 高度尿毒症・ 糖尿病・ ステロイド・ 超高齢など しかしながら、テンコフカテーテル添付文書に、下記のように書かれており、イソジンの使用は大丈夫なのかと、よ...