2025年2月17日月曜日

非がん患者への緩和ケア提供は大切だが死への誘導にならぬようきわめて慎重に行うべき Liverpool Care Pathway から学ぶこと Providing palliative care to non-cancer patients is important, but should be done very carefully so as not to lead to death. Lessons Learned from the Liverpool Care Pathway.

1990年代後半、病院や施設での終末期対応があまりにもお粗末ということで、ホスピス緩和ケアの手法を一般病院や施設でパスとして使用できるように、イギリスの国立リバプール大学病院マリーキュリーホスピスで開発されたのがリバプールケアパスウェイ(LCP)です
2003年にイギリスNHSで制度化されました

ところが、実際に運用してみると、下記のような問題が明らかになりました
  • 高齢患者に機械的に適用され、鎮静と脱水によって手間をかけずに死なせるための手順書と化してしまっているとの告発
  • まだかなり生きられる高齢患者がLCPによって殺されている可能性が高いこと
  • エビデンスもなしに始められるLCPは、もはやケア・パスというよりも幇助死パスウェイと化してしまっていること

2009年 死への誘導を医療減らしのために政府が支援しているとタブロイド紙やBBCがアンチLCPキャンペーンをはり

2013年 第3者評価機構によるLCP運用不適切との評価勧告を受けイギリスでは使用中止勧告となった

実は日本でも、2010年 LCP日本語版のリリースがありましたが、上記のような経緯で普及していないようです

緩和ケアの手法が不適切に提供されると、死への誘導が行われる可能性が高いという事実です

現在の日本における医療界の倫理観は史上最低レベルに堕落しています
緩和ケアという名の薬漬けが常態化していることは周知の事実です

睡眠薬で高齢者を「寝かせきり」病院・施設の闇 2021/1/23 東洋経済オンライン
「父を助けてください」向精神薬で“廃人”にされた親、老人ホーム施設長のあぜんとする本音 2021/01/03 サイゾーウーマン

よっぽどな監視・ブレーキがないと危険だと感じます

医療・介護の性善説に基づく管理は、完全に失敗しており、もっと厳しい外部監視の目が必要なことは自明なのです
医療介護も、世襲ファミリービジネス化しており、独裁王国のような独善体制を築いていることが多いです
良心的な医師や職員が批判すると、様々な理由(パワハラ・職務怠慢など)をつけて退職に追いやられます
令和5年4月より、医療法人の決算書や事業計画書がインターネット上で公表されるようになりました
貸借対照表や損益計算書の詳細をみると、ファミリーが驚くほど利益の多くを取っている事実があります

そもそも、高額な公的治療の提供を、医師個人が判断出来ること自体が間違っているのです
医療や介護は算術では無い、高齢者を食い物にするのはやめるべき
本人の意思、本人の内なる声に耳を傾けるべきなのです

ナチス優生思想に基づいた医師による障害者などの安楽死関与の反省・批判から、ドイツの刑法学者 Karl Engisch (1948)は「生きる価値のない生命の抹殺の刑法的理論」にて安楽死の概念について述べており、我が国における安楽死の議論にも大きな影響を与えました

純粋の安楽死
        死苦緩和の措置が死期を早めるまでには至らない行為
間接的安楽死
        死苦緩和の措置が意図しない副作用として死期の短縮をもたらす行為
不作為による安楽死
医療を引き受けないという不作為によって死期を早める行為
積極的安楽死
患者の生命を断つことにより死苦を免れさせる行為
生きる価値のない生命の抹殺(不任意の安楽死)
障害者などに本人の意思に関係なく憐れみによる死を与える行為

Karl Engischは、医師は患者を保護する者であり、社会的淘汰の手先になってはならない。人間の生命の保護が社会の経済状態との関係で相対化されることはグロテスクであると。
まさにこのことですね

児玉真美さんが2014年にまとめられていますが、いまあらたに共感を持って再読いたしました
「どうせ高齢者」意識が終末期ケアにもたらすもの――英国のLCP調査報告書を読む
2014年1月10日 SYNODOS

今読み返すと彼女の指摘は実臨床の感覚に近く、正鵠を得ているように感じます
(以下抜粋)
過剰医療への批判⇒「いかに終末期医療を受けずに死ぬか・死なせるか」という議論になりがち
「いかにして終末期医療を受けずに死ぬか・死なせるか」ではなく
「いかに終末期医療を改善するか」であり
「いかにすれば個々の患者の個別性に応じて、終末期を苦しくないものにできるか」

公費による高齢者医療介護で「延命」よりも「死生観の見直しによる穏やかな最期」にシフトする時期であることは間違いありませんし、社会的入院血液透析がディストピアの極地であることも間違いないことではあります

私達の提供している緩和的腹膜透析の立ち位置がより明確になったように感じます

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