当院では、局所麻酔&腹壁ブロック+プレセデックス鎮静による、小開創テンコフカテーテル留置術を採用してきました。手術時間は20-30分程度、特別な機器も必要とせずカテーテルトラブルも少ない安定した術式です。
さらなる術式改良を目指し、低侵襲な術式の改善を模索してきました。
最近、腹直筋前鞘切開延長を行わない、ミニマム創テンコフカテーテル留置術を開発しました。優れた術式と思われますので簡単に紹介したいと思います。(近日中に動画もアップします)
手術時間は15-25分、術創は2-3cmとラパロポートひとつ分です。小さな創で腹直筋をスプリットしないため術後疼痛もかなり軽減されます。
セルジンガー法と比較しても、安全で早く低コストと三拍子そろった優れた術式と考えています。
オペ室スタッフからも、エコーとCアーム準備する手間もなく、というより準備する間もないくらい短時間で終わってしまうので、セルジンガー法よりもミニマム創のほうが圧倒的に支持されています。
安全性の面から、気管切開がセルジンガー法からハイブリッド法(気管前面露出)、ラパロのファーストポートが穿刺法から直視法が主流となったように、テンコフカテーテルも開腹操作までは直視下が推奨されると考えています。
視野を確保するために腹直筋後鞘に支持糸をかけ、それをカフ下縁の固定および切開孔縫縮に使用することが要点です。カテーテルをしっかり寝かせることもできます。
術中にリークテストを行い、術当日から貯留開始し(Urgent start)、術翌日からは1.5Lのフル貯留を行うことができます。
ポイントは下記になります、従来の手技の延長で簡単にできます。
- 腹直筋前鞘切開の延長は行わない
- 深部カフ上のみのミニマム切開
- 腹直筋後鞘に支持糸3-4針かけ吊り上げ
- 腹膜切開は最小
- タバコ縫合は行わない
- カフ下縁のZ縫合を支持糸を用いて行う
- カテーテル腹直筋後鞘固定は行う
- トンネラーにて腹直筋背側を通し前鞘を貫通
- トップカフ切開部へトンネラーで誘導
腹直筋前鞘切開を延長しないため
その分手術操作が短縮
皮膚切開・腹直筋スプリットは最小限
術後痛も少なくなります
深部カフポジションを決定
コツ:皮下脂肪厚いときはやや頭側にする
支持糸は結紮したときに縫縮されるよう
切開予定部を中心に円を描くよう3-4針かけ
結紮せずモスキートで把持しておく
コツ:1針で腹直筋後鞘に3バイトずつ運針
創が小さいため腹壁に沿わせやすいように
足側腹壁を筋鈎でしっかり引き上げ挿入する
ポイント:カフが皮膚に接触しないよう注意
針を残しておいた支持糸を使用しカフ下縁にZ縫合結紮することで切開孔が縫縮される
リークテスト200mlおこない
必要に応じ追加縫合
カテを寝かせるため後鞘前面に縫合固定
ブラインド操作で前鞘を適切な位置で貫通
トップカフ固定予定切開部まで皮下を誘導
コツ:トップカフ位置が創直下にならぬよう
カフは皮膚接触避け消毒しておく(感染予防)
続いて出口部まで皮下を誘導
当院では上腹部肋骨弓上出口で行っている
術当日0.5Lで洗浄し問題なければ1.0L貯留
翌日からは1.5Lフル貯留開始
コツ:少しくらいの出口部出血は焼かずに圧迫で止血
素晴らしいです!
返信削除手術の傷も小さく、確立された手技、流石松本先生ですね。
いつも勉強になります。