血液透析は腹膜透析より高齢者の認知症発症リスクが高いことは以前から指摘されています
2019年JASNで血液透析患者の透析中の脳血流低下による認知症発症について証明した論文が発表され、血液透析患者の脳を保護するための方策が速やかに必要と指摘されていました 高齢者にラージシャントになるグラフト造設による血液透析は認知症リスクを高めるため医学的禁忌に近いという臨床上の実感が証明されたのでした Investigating the Relationship between Cerebral Blood Flow and Cognitive Function in Hemodialysis Patients. J Am Soc Nephrol. 2019 Jan;30(1):147-158. https://jasn.asnjournals.org/content/30/1/147 Hemodialysis linked with decline in cognitive function. Nephrology News & Issues Dec. 17. 2018 https://www.healio.com/nephrology/chronic-kidney-disease/news/online/%7B9d723d2a-bf06-4fc7-8d00-5acb4dd2c623%7D/hemodialysis-linked-with-decline-in-cognitive-function 2021年にはカナダオンタリオLawson Health Research InstituteのAnazodo, Udunna CらがDialysis-Associated Neurovascular Injury (DANI)というコンセプトを提唱 https://journals.lww.com/cjasn/Fulltext/2021/07000/Dialysis_Associated_Neurovascular_Injury__DANI__in.20.aspx 不均衡症候群と同様の機序を考えているようでした(フリーなので添付しておきました) 私は個人的にはシャント肢側の脳血流低下と頚静脈逆流による脳還流不全(脳うっ血)が大きな原因ではないかと考えています 2023年3月JASNに同じグループ(カナダオンタリオLawson Health Research Institute)のAnazodo, Udunna Cらが、血液透析中のMRIとスペクトを用い、血液透析前と終了60分前の評価を行い論文化しています その結果、驚いたことにたった1回の血液透析セッションでも、脳虚血による白質の脳浮腫や脳代謝障害(N -アセチル アスパラギン酸およびコリン濃度の減少)が起きることを示しています Hemodialysis-Related Acute Brain Injury Demonstrated by Application of Intradialytic Magnetic Resonance Imaging and Spectroscopy. Anazodo UC, Wong DY, Théberge J, Dacey M, Gomes J, Penny JD, Van Ginkel M, Poirier SE, McIntyre CW. J Am Soc Nephrol (IF: 10.12; Q1). 2023 Mar 9. https://journals.lww.com/jasn/Abstract/9900/Hemodialysis_Related_Acute_Brain_Injury.96.aspx この論文のMRI/SPECTの画像(画像)をみるとシャント肢片側性障害の脳白質障害が主で代謝性というよりシャント肢脳血流逆流による脳うっ血による血流障害と考えるほうが素直ですね 左右頚動静脈血流量とMRI/SPETの相関をみてみると良いと思います 血液透析によるDialysis-Associated Neurovascular Injury (DANI)は深刻な事実ですが、患者さんに知らされていないのは大きな問題だと感じています ラージシャントの流量調整は当然ですが、そもそもラージシャントになってしまうグラフトや近位側内シャントを回避すること、腎移植・腹膜透析という腎代替療法オルタナティブの提案を積極的に行う義務が私達にはあります また、高齢者に認知症を進行させてしまう血液透析ではなくアシステッドPDを提供できるようにすることもますます重要になってきます
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