なぜ若い外科医が育たないのか
~JSDT2024暴行事件からみる一考察~ 先週末、第69回日本透析医学会(横浜)が開催されました 早耳の方はもうご存知かもしれませんが、ある会場でセッション終了後に暴行事件が発生し、警察が介入する騒動がありました 某腎不全外科名門医局出身の先生が、質問者にたいし、気に食わないということで、殴る蹴るの暴行を働いたという前代未聞の事件でした 質問内容もごく普通の内容で、手術動画供覧をみて、人体の一部を不必要に切除している可能性があること、術創が大きすぎるので患者負担を考えて開腹でなく腹腔鏡で行うべき、というコメントをしただけでした 質問に対する答えが暴力であれば、学会は不要としか言いようがないのですが このときの加害者の先生の発言で、気になったことがありましたので考察してみます 加害者が「何年卒?」と質問し答えると、「俺より下のくせに生意気なんだよ」、という発言でした この直後に、激昂して、衆目の中で暴行を加えてきたのです この先生の所属する医局や病院では、いまでも、年下が目上に質問や提案をしてはいけないのでしょうか? 実は、多くの外科系医局ではいまでもこのような前近代的な雰囲気が残っているところが多いと思います 「医局はエスカレーター、下に抜かれないが上を抜く事はできない」 外科医は手術を経験して成長しますが、手術を割り当てるのは上司部長である事が多く 手術を当ててもらえないと、一生、手術できない底辺外科医として過ごすことになります 実際、私も、有能であっても嫌がらせにあって手術トレーニングが受けれない外科医をみてきました 結果、上司の機嫌とりのゴマすりに徹することにならざるを得ないのです 自分が上司になったときに、自分がやられた嫌な思いを部下にさせないようにするかというと、そうではなく、全く同じことを踏襲してゆきます 日本の外科は徒弟制度でありなががら、一方では結果がはっきり出る競争社会でもありますので、下の医者が自分より腕が良いことは面白くないのです 最近では、ロボット手術が導入されている病院が増えてきています まずは部長が習得してから若手の順番になる場合が多いようです 引退間近の高齢外科医が、若手外科医の習熟機会を奪っていることに気づかないのでしょうか 若手外科医は外科医としての自分の将来に見切りをつけて、早々に転科を決めるのです 外科医はオールマイティですので、このような先生方が近年、在宅領域に進出してきてくれていることは、在宅医療の発展には大歓迎なのですが・・・ 若手が、組織のしがらみに囚われず、自由に意見やアイデアを出し、実力を発揮できる社会にしてゆかないと、この先の日本はますます斜陽になってゆきます 外科医の世界の話だけではないのです この事件をきっかけに、皆さんにもよく考えていただきたいと思います
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