松山日赤岡英明先生よりRenal Replacement Therapy誌に腹膜透析患者の死亡場所と死因についての検討を論文にされています
これまで腹膜透析患者にフォーカスを当て検討はなかったと思います
示唆に富む内容になっています
The place and cause of death of Japanese peritoneal dialysis patients
Renal Replacement Therapy volume 10, Article number: 41 (2024)
https://rrtjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s41100-024-00552-0
2008-2022年 愛媛県3ヶ所の急性期病院(腹膜透析患者数の80%をカバー)94例の腹膜透析患者死亡例をレトロスペクティブ解析
死亡の場は、急性期病院66% 慢性期病院5% 高齢者施設4% 自宅25%
死因は、院内死亡例では感染症が、院外死亡では心臓突然死が多かった
末期腎不全患者の終末期の腎代替療法としてはHDよりもPDの方が適している
PD患者の在宅看取りを増やすためには、感染症の予防、心血管疾患治療・予防介入の強化、ACP 推進、在宅医との連携強化が重要であると述べている
愛媛県の腹膜透析患者在宅死25%というのは、血液透析患者に比べると圧倒的に高い数字ですね
在宅医との連携においては、終末期腹膜透析患者に、これまで関わってきた(急性期医療機関)医療者がどのように継続して関わり貢献できるのか
社会的孤立にならぬよう社会的処方に積極的に関わること
グリーフケアに個人としてどう関わるべきか
SNSをはじめとしたIoTを活用することがより重要になってゆくでしょう
2020年に新型コロナ感染症流行をきっかけに、在宅看取り希望が以前にもまして増え
私ども(鹿児島)は腹膜透析在宅看取りがほぼ100%になっています
ACP 推進、在宅医との連携強化が大切なこと全くそのとおりです
予測される病状推移(Trajectory)を患者・家族と共有、ネガティブな事実であっても正直にお伝えし、症状緩和に努めることや最期まで見離さないことを約束します
ACPに関連して
コロンビア大学緩和ケア科の中川俊一先生(大学同級で元医局北大第1外科同門です)が新刊を出されました、ACPの現場で必要なエッセンスがまとめられています
【米国緩和ケア専門医が教える あなたのACPはなぜうまくいかないのか?】
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ACPの場面で冷静に対応することができるアプローチについて解説していて興味深いです
過剰医療が経済原理で排除されているアメリカと日本の現状に違いこそあれ、ACPの本質は同じであると気付かされます
相手の理解力を確かめる, 病状は2分以内にまとめる, 医療者は会話の50%以上話してはいけない, 質問にはワンワードワンセンテンスで答える……, 「何をすべきで, 何をすべきでないのか」をスキルとして明快に解説しています。
ぜひ一読をおすすめいたします
目次を引用しておきます
Ⅳこんなときどうするか?
01 「私は死ぬんですか? 」
02 「本人には言わないで」
03「ICUで外科手術後の患者。術後4週が経過。もうどう見ても救命できそうにないのに外科医の意向が強すぎて,家族との話し合いを始めることすらできない」
04 「3ステージのアプローチは理解できる。でも,そんなのやる時間がないよ」
05 「先生にすべてお任せします」
06 「先生が家族だったらどうしますか? 」
07 「もしものことなんて縁起でもない!」
08 「ACPでは治療のことは話すなというけど,その話になったらどうするの? 」
09 「2nd ステージを先にやっちゃだめ? 」
10 「それ明らかに本人の意向と違うんじゃない?!」
Ⅴコミュニケーションのコツ
01 「残念」はbad word
02 副詞を強調する
03 NURSE は目的ではなくて手段
04 同じフレーズでも言い方次第で伝わり方が変わる
05 「頑張ってきたのはわかります」はNG
06 「〇〇が必要ですが,どうしますか? 」
07 決断をその場で無理強いしない。北風と太陽の話
08 医療者の価値観を押しつけるのはご法度
09 しつこすぎるinvitation
10 反復という名のオウム返し
11 沈黙の使い方
12 「私」vs「私たち」
13 相手の立場に立って考える。「患者に寄り添う」必要はあるのか?
松山日赤岡先生よりコメント
このような場で論文を御紹介頂きまして光栄です。松山日赤の岡です。論文ではFig, Table数が限られるため、皆様に伝わり難い部分もあるかと思いますので昨年のJSPDの発表スライドをpdfで添付させて頂きます。 先ず3施設の病院死率は67,71,74%でばらつきは少なく概ね7割、残り3割が在宅死(自宅or施設)でした。但し今回の検討では自宅で急変後に病院に搬送されてそのまま看取りになった症例も「在宅死」に分類しております点はご注意下さい。 今回の大きなメッセージは病院か病院外かで死因に大きな違いがあるという点です。在宅で亡くなれる疾患と病院でしか亡くなれない疾患があります。当たり前ですが在宅医との連携・看取り依頼をしていなければ、いくら本人と家族が在宅を希望しても、急死しない限り病院に連れていかれて病院で亡くなります。今回の院外死27名の内、在宅医で看取られたのは数名で、多くが比較的若いDM・CAD既往患者の突然死でした。脳卒中、悪性腫瘍の合併症も急死でした。院外死の方が平均年齢が若いのもそのような理由があります。 この研究を行ったのも薄々PD患者の突然死が多いことに気付きつつ、病院死がHDよりは少ないこと(死因の内容はともかく)を示したかったことと、今まで愛媛県では在宅医との連携を進められていなかったことを反省する為でした。その反省を生かして2022年以降、愛媛県では在宅医との連携が進み始め、この2年間で当院フォロー患者の在宅死率(多くが患者・家族の希望/非突然死)は4~5割を超えてきました。訪看だけでなく在宅医との連携が構築できると安心して高齢者にラストPDを勧められる好循環が出来ると感じています。この2年間の当院のPD導入時平均年齢は78歳まで引き挙がっています。 ACPの話題が出ましたので、以下私見です。 高齢CKD患者の腎代替療法SDMがACPとほぼイコールだと思っています。多くの高齢CKD患者が、最初に選択したモダリティのまま最期を迎えていると思います。2nd-SDMの機会を与えられれば幸せですが、HDを選んだ殆どの高齢患者が病院で亡くなっていると思います。しかも亡くなる前には入院して濃厚な医療を受けるか長期療養入院しているパターンが多いのではないかと思います。一方、在宅医との連携が進んだ地域でPDを選択した場合は高確率で自宅ないし施設で最期を迎えられると思います。例え在宅医との連携が進んでいない場合でも、PD選択によってより長い時間を在宅で過ごすことは可能と思いますの。「ACP」と言う言葉に拘らず、療法選択時に希望する最期の迎え方やADLが低下した場合にどこで療養したいか、を確認していけば自ずとモダリティや必要な社会資源が決まってくるのかなと思っています。
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