2025年2月24日月曜日

毎年74%の透析患者がシャントトラブル発症し治療に400億円以上 ★シャントPTAたった1回分の手術コストで腹膜透析に切り替え可能 Vascular access dysfunction incidence and cost among Japanese dialysis patients

 Vascular access dysfunction incidence among Japanese dialysis patients from NDB Open Data Japan

Kenta T. Suzuki, Kiyoshi Naemura & Yuichi Sakumura

Scientific Reports volume 15, Article number: 6523 (2025) 

https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8

奈良先端科学技術大学院大学データ駆動型生物学教室から内シャント治療に関する興味深い論文が出ました

https://www.sakulab.org/home


2020-2022年度のNDB Openを使用し請求コードに基づいて、年間VA機能障害率と3か月再発率を計算。平均年間VA機能障害率は74.0%で、3か月再発率は16.9%であった。女性と高齢患者では、その割合が高く年齢は 正の相関関係にあった (ρ = 0.827–0.941)。

https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8/tables/1

https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8/figures/1

VA 機能障害率は都道府県によって異なっており、治療介入にかなりの地域差があるようですね。愛知県や中部地方と宮城県が多いようです。

https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8/figures/2


Kコードの分析なので重複カウントによって内シャント機能障害率がオーバーカウントされていると感じましたが治療数の把握にはなり、改めて内シャント機能障害によるPTA医療費が莫大な額になっていることがわかります。


手技料だけで

(184,008+37,590)件*120,000円=265億9176万円

いちばん安いデバイスで医療材料を計算

(184,008+37,590)件*(バルーン37,800円+ガイドワイヤー13,700円)=114億1229万円

足すと、手技料と医療材料の最低値概算で380億405万円という莫大な額になり、実際は400-500億円以上になることが推測されます。

PTA以外にも下記にて請求するケースもあり、これらを追加するとさらに増えるでしょう。

内シャント血栓除去術 3590点

四肢の血管拡張術・血栓除去術 22,590点

内シャント造設術 12080点

人工血管内シャント造設術 30290点

上腕動脈表在化法 5000点


シャントPTAたった1回分の手術コストで腹膜透析に切り替え可能です、追加治療も不要です。

血管に乏しい高齢者にはますます腹膜透析を勧めるべきです。

K653-3 テンコフ留置術 12000点


透析医学会でも内シャント治療のセッションは立ち見が出るほど大盛況です。それだけ、トラブルが多いということなのです。

シャントPTAは病院のドル箱になっており、病院経営が厳しい昨今、手放したくないのもわかりますが、患者中心医療の時代ですので、患者に苦痛を与え社会コストを押し上げる治療は一刻も早くやめるべきです。

2025年2月17日月曜日

非がん患者への緩和ケア提供は大切だが死への誘導にならぬようきわめて慎重に行うべき Liverpool Care Pathway から学ぶこと Providing palliative care to non-cancer patients is important, but should be done very carefully so as not to lead to death. Lessons Learned from the Liverpool Care Pathway.

1990年代後半、病院や施設での終末期対応があまりにもお粗末ということで、ホスピス緩和ケアの手法を一般病院や施設でパスとして使用できるように、イギリスの国立リバプール大学病院マリーキュリーホスピスで開発されたのがリバプールケアパスウェイ(LCP)です
2003年にイギリスNHSで制度化されました

ところが、実際に運用してみると、下記のような問題が明らかになりました
  • 高齢患者に機械的に適用され、鎮静と脱水によって手間をかけずに死なせるための手順書と化してしまっているとの告発
  • まだかなり生きられる高齢患者がLCPによって殺されている可能性が高いこと
  • エビデンスもなしに始められるLCPは、もはやケア・パスというよりも幇助死パスウェイと化してしまっていること

2009年 死への誘導を医療減らしのために政府が支援しているとタブロイド紙やBBCがアンチLCPキャンペーンをはり

2013年 第3者評価機構によるLCP運用不適切との評価勧告を受けイギリスでは使用中止勧告となった

実は日本でも、2010年 LCP日本語版のリリースがありましたが、上記のような経緯で普及していないようです

緩和ケアの手法が不適切に提供されると、死への誘導が行われる可能性が高いという事実です

現在の日本における医療界の倫理観は史上最低レベルに堕落しています
緩和ケアという名の薬漬けが常態化していることは周知の事実です

睡眠薬で高齢者を「寝かせきり」病院・施設の闇 2021/1/23 東洋経済オンライン
「父を助けてください」向精神薬で“廃人”にされた親、老人ホーム施設長のあぜんとする本音 2021/01/03 サイゾーウーマン

よっぽどな監視・ブレーキがないと危険だと感じます

医療・介護の性善説に基づく管理は、完全に失敗しており、もっと厳しい外部監視の目が必要なことは自明なのです
医療介護も、世襲ファミリービジネス化しており、独裁王国のような独善体制を築いていることが多いです
良心的な医師や職員が批判すると、様々な理由(パワハラ・職務怠慢など)をつけて退職に追いやられます
令和5年4月より、医療法人の決算書や事業計画書がインターネット上で公表されるようになりました
貸借対照表や損益計算書の詳細をみると、ファミリーが驚くほど利益の多くを取っている事実があります

そもそも、高額な公的治療の提供を、医師個人が判断出来ること自体が間違っているのです
医療や介護は算術では無い、高齢者を食い物にするのはやめるべき
本人の意思、本人の内なる声に耳を傾けるべきなのです

ナチス優生思想に基づいた医師による障害者などの安楽死関与の反省・批判から、ドイツの刑法学者 Karl Engisch (1948)は「生きる価値のない生命の抹殺の刑法的理論」にて安楽死の概念について述べており、我が国における安楽死の議論にも大きな影響を与えました

純粋の安楽死
        死苦緩和の措置が死期を早めるまでには至らない行為
間接的安楽死
        死苦緩和の措置が意図しない副作用として死期の短縮をもたらす行為
不作為による安楽死
医療を引き受けないという不作為によって死期を早める行為
積極的安楽死
患者の生命を断つことにより死苦を免れさせる行為
生きる価値のない生命の抹殺(不任意の安楽死)
障害者などに本人の意思に関係なく憐れみによる死を与える行為

Karl Engischは、医師は患者を保護する者であり、社会的淘汰の手先になってはならない。人間の生命の保護が社会の経済状態との関係で相対化されることはグロテスクであると。
まさにこのことですね

児玉真美さんが2014年にまとめられていますが、いまあらたに共感を持って再読いたしました
「どうせ高齢者」意識が終末期ケアにもたらすもの――英国のLCP調査報告書を読む
2014年1月10日 SYNODOS

今読み返すと彼女の指摘は実臨床の感覚に近く、正鵠を得ているように感じます
(以下抜粋)
過剰医療への批判⇒「いかに終末期医療を受けずに死ぬか・死なせるか」という議論になりがち
「いかにして終末期医療を受けずに死ぬか・死なせるか」ではなく
「いかに終末期医療を改善するか」であり
「いかにすれば個々の患者の個別性に応じて、終末期を苦しくないものにできるか」

公費による高齢者医療介護で「延命」よりも「死生観の見直しによる穏やかな最期」にシフトする時期であることは間違いありませんし、社会的入院血液透析がディストピアの極地であることも間違いないことではあります

私達の提供している緩和的腹膜透析の立ち位置がより明確になったように感じます

2025年2月5日水曜日

2025年2月3日 United Therapeutics Corporation UKidney™の臨床試験をFDAが承認

 2024年3月16日 MGH & eGENESISは遺伝子改変ブタ腎臓のヒトへの移植に成功したと発表しました

2024年4月12日 残念ながら拒絶反応や異種感染症以外の原因で患者死亡と発表されていました

遺伝子改変ブタの開発は世界的な競争が行われています

ユナイテッド・セラピューティクス社UKidney™は10個の遺伝子を改変した遺伝子改変ブタを作成

ユナイテッド・セラピューティクス社UKidney™の前臨床試験はジョンズ ホプキンス大学の山田和彦とアンドリュー M. キャメロンによって行われました

バージニアにある臨床グレードSPF環境の遺伝子改変ブタ飼育場では年間125臓器の出荷が可能で、現在、ミネソタ州にさらに建設中だそうです


2024年11月25日 ユナイテッド・セラピューティクス社の異種移植としては4例目になる、UKidney™を移植する初の異種腎移植に成功しました

https://ir.unither.com/press-releases/2024/12-17-2024-120130031

レシピエントはアラバマ州に住む53歳女性 Towana Looney

母親に生体腎移植ドナーとして腎提供後、妊娠高血圧を契機として腎不全となり透析導入されていたが、クロスマッチ陽性のために腎移植が受けれない状況であったそうです

UKidney™異種腎移植はNYU Langone HealthのRobert Montgomeryにより執刀されました

術後2ヶ月、腎機能は問題なく、異種感染の兆候もないということでした

https://apnews.com/article/pig-kidney-transplant-xenotransplant-nyu-alabama-021afcc9697a0a490c0d0726482515b4


2025年2月3日 United Therapeutics Corporation (Nasdaq: UTHR)からUKidney™ 異種腎移植の臨床試験計画がFDAの承認を得たとHP上で発表されました

2025年半ばに開始され、当初は6例、その後は60例まで、第 1 相/第 2 相/第 3 相複合試験 (フェーズレススタディ)を行う予定のようです

2 つのグループにおける UKidney の安全性と有効性を評価することを目的としています

対象患者は年齢 55-70 歳、ESRD の診断、少なくとも 6 か月間の血液透析であることと下記のいずれかの要件を満たしていることです

①医学的理由により従来の同種腎移植が受けられないと評価され、判断されたESRD患者

②腎移植の待機リストに載っているが、5年以内に脳死腎移植を受けるよりも死亡するか、移植を受けられない可能性が高いESRD患者

有効性エンドポイントには、参加者の生存率、UKidney のグラフト生存率、糸球体濾過率、および移植後 24 週間の参加者の生活の質の変化が含まれます。UKidney を受け取った参加者の全生存期間と UKidney 自体の全生存期間も有効性エンドポイントです

安全性エンドポイントには、有害事象および重篤な有害事象の発生率、全死亡率、タンパク尿、人獣共通感染症、日和見感染症の発生率が含まれます

腎不全医療に革命的な変化を起こす可能性のある異種腎移植が現実化してきました
異種感染症や慢性拒絶がクリアできるのか

経緯を見守ってゆきたいと思います

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2025.04.13 CNN 遺伝子改変ブタの腎移植、130日間の最長記録を樹立 米女性
https://www.cnn.co.jp/usa/35231720.html
CNNは前向きなタイトルをつけているが、遺伝子改変ブタ腎移植、急性拒絶によるグラフトロスのニュース
2024年11月25日 Towana Looney(53) ユナイテッド・セラピューティクス社の異種移植としては4例目になる、UKidney™を用いた遺伝子改変ブタ腎移植
2025年4月4日 感染症治療のため免疫抑制剤を減量したところ、急性拒絶反応を発症しグラフトロスのため移植腎摘出
感染症は異種感染症とは無関係と報道されているが詳細は不明

2025年1月27日月曜日

Urgent Strat PD(カテーテル留置から24時間以内の貯留開始)を標準にしましょう Make Urgent Strat PD (start indwelling within 24 hours of catheter placement) the standard!

 2014年より Urgent Strat PD(カテーテル留置から24時間以内の貯留開始)を行ってきましたが、とくに問題なく、緊急導入や入院期間短縮に役立っています。

こちらの研究でも、24時間以内の貯留開始でリークや感染の増加は見られなかったと結論しています。Feasibility of a break-in period of less than 24 hours for urgent start peritoneal dialysis: a multicenter study Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Renal Failure

2019年のISPDガイドライン 腹膜透析アクセス造設と維持に関するガイドラインにおいて、リークリスクを最小化するために、カテーテル留置術2週間後からの貯留を推奨しているため、いまだにUrgent Strat PDを採用していない病院も多いようですが、間違っています。

CREATING AND MAINTAINING OPTIMAL PERITONEAL DIALYSIS ACCESS IN  THE ADULT PATIENT: 2019 UPDATE

PERITONEAL LEAKAGE AND MANAGEMENT

l  We recommend that initiation of dialysis following catheter placement be delayed for 2weeks when possible to minimize the risk of leaks (1B)

l  We recommend that acute and urgent start of PD <2 weeks following catheter placement utilize a recumbent, low-volume, intermittent dialysis regimen, leaving the peritoneal cavity dry during ambulatory periods to minimize the risk of leak (1C)

l  We recommend the use of CT peritoneography or peritoneal scintigraphy to investigate suspected peritoneal boundary dialysate leaks (1A)

最近のUrgent Strat PD(USPD)についての文献をまとめておきましょう

2017年からUrgent Strat PD を取り入れているブラジルからの興味深い報告

Urgent Strat PDによる導入を開始してから、なんと、3年間でPD患者数が256%と驚異的に増加したそうです

Urgent-start dialysis: Comparison of complications and outcomes between peritoneal dialysis and haemodialysis.

Dias DB, Mendes ML, Caramori JT, Falbo Dos Reis P, Ponce D.

Perit Dial Int. 2021 Mar;41(2):244-252. doi: 10.1177/0896860820915021. Epub 2020 Mar 30.

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0896860820915021

PD患者増加には、やはり、Urgent start PDによるスムーズな導入が鍵になっているようです

Urgent-Start Peritoneal Dialysis: The First Year of Brazilian Experience.

Bitencourt Dias D, Mendes ML, Burgugi Banin V, Barretti P, Ponce D.

Blood Purif. 2017;44(4):283-287.

カテーテル挿入はタイのベッドサイド挿入と同じ方法

http://www.jmatonline.com/files/journals/1/articles/1495/public/1495-4560-1-PB.pdf

腎臓内科医による挿入

局麻下経皮セルジンガー法

正中もしくは傍腹直筋アプローチ

コイル型カテーテル

深部カフのタバコ縫合なし、腹直筋前鞘前面に留置

彼らは72時間以内にHigh volume PD (30ml/kg)の透析液貯留を行うそうです

カテーテルトラブルは多い印象

外科的修復を要したカテーテル位置異常 8/51 15.6%

リーク 4/51 7.8%

興味深いのは、退院後は手技取得まで透析センターで隔日8-10hAPDトレーニングを行うそうです(夜間?)

日本も夜間は透析室ベッド空いてるので、オーバーナイトPDトレーニングもありですね


2020年にCochrane ReviewでもUrgent Start PDを支持するレビューとなっています

https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD012913.pub2/epdf/full

 

タイから緊急導入でも問題なくできるという内容の論文

June 10, 2022 Kidney International Reportsにタイのマハラトナコンラチャシマー病院からの2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群を比較した論文

https://www.kireports.org/article/S2468-0249(22)01434-6/fulltext

この病院は1680床もあるタイの巨大基幹病院のようです

201811月から20202月、緊急透析導入の必要な成人207人を対象

2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群の比較

導入6週目の死亡率に差はなく、複合的合併症は37% vs 19%、透析関連合併症 24% vs 4% Urgent Start PD群のほうが少なかった

結論として、緊急透析導入もUrgent start PDで問題なくできるということです

カテーテル留置は年間30例以上3年以上の手術経験のあるベテラン腎臓内科医によって局麻下セルジンガー法で留置

タイは痩せているひとが多いのでテンコフ留置は容易だろうなと想像

また、腎臓内科医がカテ留置を行うので、外科コンサルが不要で、緊急導入時に即座にカテ留置できる背景もあるようです

貯留量は8001000mlを仰臥位で開始し、2週間以内に1.5-2.0Lまで貯留量を増加

導入期CAPD5/週とされていています、公的病院なので土日は公務員は働かないのかな?

リークはやはりUrgent Startのほうが7/104と多い(HD→PD2/103)ようですがなんとかなったと書いてありますね

セルジンガーなのでこのくらいのリークはしょうがないでしょうね

ちなみに私どもが最近開発したミニマム創でリークはゼロです

 

アメリカでは2019年にThe Advancing American Kidney Health (AAKH) Executive Order(大統領令)やここ数年のCOVID-19パンデミックによって在宅透析普及が加速しています

スムーズな導入のキーになるのはUrgent start PD(カテ留置から24時間以内の導入)ここ数年のホットトピックになっています

2014年よりUrgent start PDを取り入れてきましたがまったく問題ありませんでした

海外ではオペ室と外科医や麻酔科医のチャージが高額なことも背景にあるようですが、途上国ではベッドサイドでの経皮セルジンガー法が行われている国も多いです

NHS 2014 Data Baseによると英国では腹膜透析カテーテル留置術の比率は下記のようになっていました

外科的                  38.1

腹腔鏡下                 18.1

経皮的                     28.3

 

PDファーストのタイからの経皮セルジンガーカテーテル挿入&Urgent start PDの報告

Urgent start HD → PD よりも Urgent start PD のほうが合併症が少なく臨床成績も良好という報告

Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure. Parapiboon W, et al. Kidney Int Rep.2022

日本は病院資源が豊かで(とくに金銭面での)オペ室使用のハードルが低いので、ベッドサイドにこだわらなくてもよいとは思います

また、日本は医療事故に対する医療訴訟環境が世界最悪なので、医療安全第一がもとめられることもあります

いずれにせよ、Urgent start PDにより短期間のスムーズな導入が可能になることで、PD導入のハードルが下がることは間違いないようです(自験も含めて)

経皮セルジンガー法によるカテーテル留置も症例を選んでおこなってみてもよいでしょう。最近、開発したミニマム創(創長2-3cm)テンコフカテーテル留置術がより有力な手術手技になると考えています。

Refference

CREATING AND MAINTAINING OPTIMAL PERITONEAL DIALYSIS ACCESS IN  THE ADULT PATIENT: 2019 UPDATE

Cochrane Review Urgent Start PD 2020

Feasibility of a break-in period of less than 24 hours for urgent start peritoneal dialysis: a multicenter study Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Renal Failure

1.     Analysis of mechanical complications in urgent-start peritoneal dialysis Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Journal of Nephrology

2.     Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure Volume 35, pages 1489–1496, (2022) KI REPORT

3.     Feasibility of a break-in period of less than 24 hours for urgent start peritoneal dialysis: a multicenter study Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Renal Failure

4.     Urgent-start peritoneal dialysis: Association with outcomes Volume 35, pages 1489–1496, (2022) PDI

5.     Urgent vs. planned peritoneal dialysis initiation: complications and outcomes in the first year of therapy Braz. J. Nephrol. 44(4) Oct-Dec 2022

R   Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure. Parapiboon W, et al. Kidney Int Rep.2022







2025年1月12日日曜日

医師こそ読むべき『透析を止めた日』 松永正訓先生 The Day He Stopped Dialysis" should be read by doctors. Commentary by Dr. Matsunaga.

 2025年1月12日 m3.com医療維新、松永正訓(ただし)先生の連載「けっこう楽しい開業医ライフ」に、【医師こそ読むべき『透析を止めた日』】というタイトルの記事がアップされました。
https://www.m3.com/news/iryoishin/1252044

本質を突いた素晴らしい論評になっています。
私どもの【鹿児島モデル】も紹介していただいています。

以下、100%の共感とともに、本文から引用紹介させていただきます。

医療者はスピリチュアルケアを含んだ緩和ケアの提供が必要。
スピリチュアル・ペインの本質は、「時間性」「自律性」「関係性」の3つの喪失という学説。

「時間性」を失うとは、死によって過去が消えることである。これまで積み上げてきた人生が消えること。そして、当然、未来も消える。過去・未来という時間が消えれば自分が依って立つ現在も消える。

「自律性」を失うとは、自分の身体のコントロールを手放すということ。できないことが増えて、自分が人でなく「物」に近づくと、人は己の存在に価値を見出せなくなる。

「関係性」を失うとは、自分を取り巻く人や物と別れるということである。人間とは人と人、あるいは物との関係性で生きている。また、関係性を築くために生きているとも言える。そのつながりを失うとき、魂は痛みで悲鳴を上げる。

この本を読んで不快になる医師もいるかもしれない。だが、医師であれば誰でもこの本を読んだ方がいい。いや、読むべきであろう。透析は自分には関係ないという考えは持ってはいけない。すべての医師が医療を広く見るべきだ。

いいノンフィクションは、物語る力が強く、多くの人が知らない世界を知らしめ、そして読み手の思考や行動を変容させる。堀川さんは、この本を通じて、ある意味で作家人生をかけて医療界に変革を迫っている。

真に拠り所となる医療者はどこにいるのだろうか。
透析を巡るトータルケアが少しでもよくなってほしいという患者家族の祈り。
われわれはその異議申し立てに真剣に応えなくてはならない。


2024年12月24日火曜日

なぜ、透析患者は「安らかな死」を迎えることができないのか? Why can't dialysis patients die “peacefully”?

 なぜ、透析患者は「安らかな死」を迎えることができないのか?

10年以上におよぶ血液透析、腎移植、再透析の末、透析を止める決断をした夫、その壮絶な最期を看取った経験をもとにノンフィクション作家堀川恵子さんが講談社から新刊を出版されます。 https://amzn.asia/d/9T7g0r4 献本を先程読了いたしました。 取材に基づいた事実の積み重ねによって、極めて正確に問題点をえぐり出してくれています。これまでの透析医療についての出版物とは異なり重厚な考えさせる内容になっています。 腹膜透析という選択肢についても詳細に記載していただきました。鹿児島へも複数回取材にお越しいただき、その内容も詳しく紹介していただいています。 腹膜透析の章では私共もお馴染みの先生方が登場され、裏話や苦労話もあって面白くあっという間に読んでしまいました。 東北医科薬科大学森建文先生 かしま病院 中野広文先生 柴垣医院 柴垣圭吾先生 東京医大 竹口文博先生(監修) さいごに、日本腎臓病学会理事長・東大教授の南学正臣先生が日本の現状を俯瞰された解説を書かれています ぜひ一読をお勧めいたします <目次> 序章 《第一部》 第1章 長期透析患者の苦悩 第2章 腎臓移植という希望 第3章 移植腎の「実力」 第4章 透析の限界 第5章 透析を止めた日 《第二部》 第6章 巨大医療ビジネス市場の現在地 第7章 透析患者と緩和ケア 第8章 腹膜透析という選択肢 第9章 納得して看取る 献体――あとがき 解説 南学正臣(日本腎臓学会理事長)


2024年12月23日月曜日

AQP1 Promoter Variantと除水不良 AQP1 Promoter Variant, Water Transport, and Outcomes in Peritoneal Dialysis

 AQP1 Promoter Variant, Water Transport, and Outcomes in Peritoneal Dialysis

October 21, 2021 N Engl J Med 2021; 385:1570-1580 DOI: 10.1056/NEJMoa2034279 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2034279 AQP1 promotor 遺伝子解析で除水不全が予測可能になると同時に有力な治療ターゲットになりうるということです 将来は水分制限のない腹膜透析治療が可能になるかもしれません また、ハバードWASPの医療政策雑誌であるNEJMで腹膜透析の話題がフリープレビューという点も興味深いです

病院クリニック(更生医療施設)と在支診(非更生医療施設)の腹膜透析診療報酬の連携パターン

 病院クリニック(更生医療施設)と在支診(非更生医療施設)の腹膜透析診療報酬の連携パターン例

①毎月更生医療病院クリニック受診(更生医療 PD管理料 透析液・更生医療内服1ヶ月処方) 、在支診(医療保険 在総管 内服1ヶ月処方) ②2ヶ月に1回 更生医療病院クリニック受診(更生医療 PD管理料 透析液2ヶ月処方 更生医療内服2ヶ月処方) 、間の月は在支診(医療保険 在総管+PD管理料 内服1ヶ月処方) ③3ヶ月に1回 更生医療病院クリニック受診(更生医療PD管理料 透析液3ヶ月処方 内服1ヶ月処方) 、間の2ヶ月は在支診(医療保険 在総管+PD管理料 内服1ヶ月処方) 在支診受診時の窓口支払は通常の医療保険扱い 窓口支払は発生するが身体障害者1級であれば医療費は全額払い戻しあり(3級の場合は要調整) 透析液は更生医療機関より処方することで窓口支払軽減 腹膜透析管理は共診体制、受診のない月であってもMCSで情報共有継続

2021 ESRD Treatment Choices (ETC) Model

 2021/10/29 CMS(Centers for Medicare & Medicaid Services)からESRD Treatment Choices (ETC) Modelの最終発表がありました

在宅透析と生体腎移植への診療報酬インセンティブが強化されています 施設だけでなく担当医へのペナルティや再教育プログラムまである目を疑うような内容で、在宅透析への本気度が伺えます 日本でもこのような政策誘導が必要だと感じます CMS final rule updates payment rates for dialysis providers https://www.healio.com/news/nephrology/20211101/cms-final-rule-covering-dialysis-payments-includes-incentives-to-improve-equity-of-care?utm_source=selligent&utm_medium=email&utm_campaign=news&M_BT=4490553463039

CMSのETCモデルのページ https://innovation.cms.gov/innovation-models/esrd-treatment-choices-model MedCityNews 2021/11/1 類似記事 New CMS incentives look to close equity gap in home dialysis, kidney transplants The agency issued a final rule on Friday that would update payment rates for dialysis. It includes a payment model that would incentivize healthcare providers to decrease disparities for in-home dialysis rates and transplant rates among low-income patients. https://medcitynews.com/2021/11/new-cms-incentives-look-to-close-equity-gap-in-home-dialysis-kidney-transplants/

この政策のお手本はカナダ Ontario Renal Network(ORN)です Growing home dialysis: The Ontario Renal Network Home Dialysis Initiative 2012–2019 https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/08968608211012805?journalCode=ptda

2021 NEJM Review article PD 腹膜透析普及の障害となっているのは医療者の経験・知識不足

 2021 NEJM Review article PD

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra2100152 腹膜透析を推進してゆく上で障害となっているのが医療者の経験・知識不足であり、Review articleに取り上げた理由はそういった医療者に勉強してもらうためです、という冒頭の一文、日本と状況同じだと思いました(ただそういう方々はこれ読んで勉強しないでしょうけどね) Many clinicians lack knowledge of and experience in using peritoneal dialysis and may not feel comfortable managing the care of patients who are using that type of dialysis. This review aims to address the knowledge gap.

シリコーンカテーテルとヨードについて テンコフカテーテル出口部のイソジン消毒に関する考察 Silicone Catheters and Iodine. Considerations for Iodine Disinfection of Tenchoff Catheter Exit Site.

私どもは、下記のような感染リスクの高い患者には、イソジンゲルを出口部処置にルーチンで使用 しております 低栄養・ 緊急導入・ 高度尿毒症・ 糖尿病・ ステロイド・ 超高齢など しかしながら、テンコフカテーテル添付文書に、下記のように書かれており、イソジンの使用は大丈夫なのかと、よ...