私どもは、下記のような感染リスクの高い患者には、イソジンゲルを出口部処置にルーチンで使用
低栄養・緊急導入・高度尿毒症・糖尿病・ステロイド・超高齢など
(4) 本品をポビドンヨードで長時間浸潤すると早く劣化するので、
ハヤシデラ PDカテーテル 添付文書 第10版 2024年8月改定
まつもとクリニックのブログ
私どもは、下記のような感染リスクの高い患者には、イソジンゲルを出口部処置にルーチンで使用
低栄養・緊急導入・高度尿毒症・糖尿病・ステロイド・超高齢など
腹膜透析と血液透析の治療成績はほぼ同等であると言われているにもかかわらず、腹膜透析が普及していない原因についてはさまざま指摘されていますが、テクニカルにはいずれも克服できるものであると考えられています。
Epidemiology of peritoneal dialysis outcomes
Nature Reviews Nephrology volume 18, pages779–793 (2022)
高齢者で手技が自立できないケースであっても、我が国の医療介護保険制度は世界的にみても優れているおかげで、訪問看護を活用したアシステッドPDでまったく問題なく行えます。
腹膜透析を患者に適切に届けられていない最大の原因は、医療者側の怠惰であると指摘する声もあります(個人的にはそう考えています)。
地域の大学医局や基幹病院を頂点とする医療教育ギルドにおいて、不幸にも低レベルな教育しか受けられなかった医療者が、第3者による監視もされないままに低レベル低価値医療を提供し続けていることに問題の本質があります。
脳外科竹田くんの問題は、ことの大小はあれども、じつは日本の医療界、とくに選択肢が限られている地方では普遍的な側面でもあるのです。https://dr-takeda.hatenablog.com/
ポイントは下記になります、従来の手技の延長で簡単にできます。
1956年、腹膜灌流による国内初の救命報告は、貝毒急性腎不全による56歳男性患者であった。
單腎部分切除と腹膜灌流
長崎大学泌尿器科 城代浹一郎 日泌尿会誌 48巻 10号 1957 p807-819
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol1928/48/10/48_10_807/_pdf/-char/ja
1946年に人工腎臓による世界初の救命に成功したKolffがSLE腎症の77歳女性にたいする高齢者透析の初報告を行ったのは1957年であった。
Use of artificial kidney in the very young, the
very old, and the very sick
W A KELEMEN, W J KOLFF J Am Med Assoc. 1959 Oct
3:171:530-4.
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/326812
我が国の腹膜透析の歴史は高齢者から始まったとも言える。
1961年、人工腎臓の実用化に成功したスクリブナーの所属する米国シアトル市スウェーディッシュ・ホスピタルにて「人工腎臓センター管理政策委員会」
が招集された。限られた透析医療資源において「全員が生きられないときに誰が生きるべきか」を選別するためである。1962年11月のライフ誌の特集記事において、本来、生命の選別は神のみに許されると思われることから【神の委員会】と呼ばれた。透析黎明期にあっては、45歳以下で社会復帰が望める患者のみが審査対象であり、高齢者は透析治療の対象外であった。
Alexander S. They decide who lives, who dies: medical miracle puts a moral burden on a small committee. Life. November 9, 1962;53(19):102-4, 106, 108, 110, 115, 117-8, 123-24.
1975年に開催された第9回人工透析研究会の主題は、普及からわずか10年足らずであったが、驚くことに、すでに【高令者の透析】であった。透析医療の進歩普及によって高齢者への適応拡大が試みられるなか、社会復帰や生きがい、透析医療費など、現代も続いている課題について議論されている。
国立王子病院小出桂三らは「高令者の人工透析」の演題で透析方法について述べているが、50歳以上では腹膜透析および腹膜透析と血液透析の併用療法が多数を占めていると発表している。当時は血液透析機器が不足しており、高齢者に関わらず、腹膜透析との併用が一般的だったようである。また、50歳以上が高齢者と分類されており、時代の変化を痛感させられる。
高令者の透析現況 人工透析研究会会誌9 巻 (1976) 1 号 P12
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsdt1968/9/1/_contents/-char/ja
1992年ころになると、透析人口高齢化に伴う社会的入院と病床不足が問題化した。徳島県川島病院では、その対策として在宅や施設で施行可能な腹膜透析も取り組まれたが、結果的に入院率が高く(平均15-20%)有効な手段ではなかったという。現代のような、地域の医療介護資源が整備されていなかった当時としては立派な数字だったと思う。
透析患者の入院を考える 日本透析医会雑誌 平成4年11月30日 Vol.8 No.2(17号)p185
https://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_doc_public/8-2.pdf
いま振り返ると、腹膜透析が、社会的入院解決の受け皿になるためには、2000年代の地域包括ケアシステムの整備や訪問看護の普及、医療依存度の高い患者や看取りまで対応する老人施設の登場、さらにIoT技術の進歩普及を待つ必要があったのである。
かしま病院中野広文らは、終末期透析患者では、治療によるADLや病態の改善を積極的に期待することができないため、これらの患者のQOLを向上させるためには、尿毒症治療そのものよりも看護・介護の比重が大きくなると指摘。終末期患者には質の高い看護・介護を導入しやすい治療法である腹膜透析の有用性を提案し、これをPDラストと呼んだ。
在宅医療におけるPDラストの有用性と課題 中野広文 透析会誌35(8):1205-1210,2002
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt1994/35/8/35_8_1205/_pdf/-char/ja
2002年には高齢者腹膜透析研究会(ゼニーレPD研究会)が発足し、様々な先駆的な取り組みが行われた。済生会八幡病院中本雅彦らはPDラスト北九州方式として通院困難となった血液透析患者を腹膜透析に療法変更し在宅療養とし、透析クリニックからの訪問診療を行った。埼玉医大中元秀友らは、クラウドに腹膜透析患者管理システムを構築し、インターネットを介して患者情報を共有化する連携モデルを提案、現代の遠隔患者管理(Remote Patient Monitoring)の先駆けになる構想であった。
テキストブック高齢者の腹膜透析 東京医学社 2008年 (絶版)
https://www.tokyo-igakusha.co.jp/b/show/b/118.html
2003年、岡山済生会総合病院平松信らは、高齢者において、腹膜透析は、合併症率を増やさず安定して維持可能であり、血液透析に比べ、残存腎機能保持に優れ、認知症スケール、身体的自己維持スケール、および日常生活の手段的活動スケールいずれにおいても高いスコアであることを示した。このことは、免疫力の低下している高齢者は感染リスクが高く、腹膜透析は不向きである、という従来の考え方を覆すものであった。
Improving outcome in
geriatric peritoneal dialysis patients
M. Hiramatsu Perit
Dial Int. 2003 Dec:23 Suppl 2:S84-9.
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/089686080302302s18
このようななか、高齢化社会におけるニーズの変化にたいし、自由度とQOLに優れ、循環動態に与える影響も少なく、穏やかな在宅療養生活を可能にする腹膜透析への取り組みが広がっており、海外でも同様の試みがなされてきている。
2015年、スペインより、手技自立困難となった終末期腹膜透析患者を血液透析に変更することはやめ、腹膜透析を、Palliative peritoneal dialysis(緩和的腹膜透析)というコンセプトで【呼吸困難や尿毒症などの症状緩和を可能とし最期までケアされていることが実感できる治療法】として継続することを提唱している。
Palliative peritoneal
dialysis: Implementation of a home care programme for terminal patients treated
with peritoneal dialysis (PD)
Maite Rivera Gorrin Nefrologia.
2015;35(2):146-9.
https://www.revistanefrologia.com/en-pdf-S2013251415000061
フランスは日本と似た医療介護の2本柱の制度を有しているが、その実態は大きく異なる。主に慢性期・終末期ケアを提供する日本の在宅医療に対し、フランスの在宅入院制度Hospitalisation à domicile (HAD)は急性期在宅医療であり、そのコンセプトは入院回避と早期退院であり在宅透析もその対象である。訪問看護を主体とする多職種協働の集中的ケアマネジメントにより入院医療に近いサポートを提供し医療依存度の高い患者を在宅で支えている。これらのシステムを活用することで、フランスでは56%がアシステッドPDであり、血液透析からの腹膜透析への移行も8.6%であるという。
Impact of Assisted
Peritoneal Dialysis Modality on Outcomes: A Cohort Study of the French Language
Peritoneal Dialysis Registry
Solène Guilloteau Am J
Nephrol. 2018;48(6):425-433.
高齢者腹膜透析普及のボトルネックとして,腹膜透析医療についての情報不足や提供施設が少ないことが挙げられる。腹膜透析プログラムの開始に必要な医療リソースは血液透析にくらべ圧倒的に少なく、維持管理もIoTを駆使した在宅支援診療所や訪問看護との連携によって以前に比べ容易になった。
2018年、遠隔治療モニタリングが利用可能となり、多患者一括管理や治療密度改善が可能となった。クラウド型電子カルテやSNS連携ツールとの相乗効果によって、在宅や施設であってもあたかも病院と同様なバーチャルホスピタル環境の提供が可能となった。IoT技術と先進テクノロジーの相乗効果によるイノベーションが急速に進行し、患者を中心とした異なるケアシーンや医療従事者をIoTによってつなぐ、コネクテッドケアの概念は腹膜透析医療との親和性が高く、腹膜透析地域連携ネットワーク構築によってより精度の高い管理を可能にした。
地域医療介護リソースの充実は、近年の極めて大きな社会環境変化であった。2000年より始まった介護医療保険制度と在宅支援診療所や訪問看護ステーションなどとの地域包括ケアシステムの拡充によって、地域の受け皿はソフト・ハードともに十分に整備され、腹膜透析医療が病院単独の医療であった過去から脱却し,地域医療への広がりを可能にした。
高齢腎不全患者に対する我が国の腹膜透析の歴史・経験についてまとめた。高齢化社会のなか私達の進む方向性を示唆してくれているといえよう。
Vascular access dysfunction incidence among Japanese dialysis patients from NDB Open Data Japan
Kenta T. Suzuki, Kiyoshi Naemura & Yuichi Sakumura
Scientific Reports volume 15, Article number: 6523 (2025)
https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8
奈良先端科学技術大学院大学データ駆動型生物学教室から内シャント治療に関する興味深い論文が出ました
2020-2022年度のNDB Openを使用し請求コードに基づいて、年間VA機能障害率と3か月再発率を計算。平均年間VA機能障害率は74.0%で、3か月再発率は16.9%であった。女性と高齢患者では、その割合が高く年齢は 正の相関関係にあった (ρ = 0.827–0.941)。
https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8/tables/1
https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8/figures/1
VA 機能障害率は都道府県によって異なっており、治療介入にかなりの地域差があるようですね。愛知県や中部地方と宮城県が多いようです。
https://www.nature.com/articles/s41598-025-91034-8/figures/2
Kコードの分析なので重複カウントによって内シャント機能障害率がオーバーカウントされていると感じましたが治療数の把握にはなり、改めて内シャント機能障害によるPTA医療費が莫大な額になっていることがわかります。
手技料だけで
(184,008+37,590)件*120,000円=265億9176万円
いちばん安いデバイスで医療材料を計算
(184,008+37,590)件*(バルーン37,800円+ガイドワイヤー13,700円)=114億1229万円
足すと、手技料と医療材料の最低値概算で380億405万円という莫大な額になり、実際は400-500億円以上になることが推測されます。
PTA以外にも下記にて請求するケースもあり、これらを追加するとさらに増えるでしょう。
内シャント血栓除去術 3590点
四肢の血管拡張術・血栓除去術 22,590点
内シャント造設術 12080点
人工血管内シャント造設術 30290点
上腕動脈表在化法 5000点
シャントPTAたった1回分の手術コストで腹膜透析に切り替え可能です、追加治療も不要です。
血管に乏しい高齢者にはますます腹膜透析を勧めるべきです。
K653-3 テンコフ留置術 12000点
透析医学会でも内シャント治療のセッションは立ち見が出るほど大盛況です。それだけ、トラブルが多いということなのです。
シャントPTAは病院のドル箱になっており、病院経営が厳しい昨今、手放したくないのもわかりますが、患者中心医療の時代ですので、患者に苦痛を与え社会コストを押し上げる治療は一刻も早くやめるべきです。
2024年3月16日 MGH & eGENESISは遺伝子改変ブタ腎臓のヒトへの移植に成功したと発表しました
2024年4月12日 残念ながら拒絶反応や異種感染症以外の原因で患者死亡と発表されていました
遺伝子改変ブタの開発は世界的な競争が行われています
ユナイテッド・セラピューティクス社UKidney™は10個の遺伝子を改変した遺伝子改変ブタを作成
ユナイテッド・セラピューティクス社UKidney™の前臨床試験はジョンズ ホプキンス大学の山田和彦とアンドリュー M. キャメロンによって行われました
バージニアにある臨床グレードSPF環境の遺伝子改変ブタ飼育場では年間125臓器の出荷が可能で、現在、ミネソタ州にさらに建設中だそうです
2024年11月25日 ユナイテッド・セラピューティクス社の異種移植としては4例目になる、UKidney™を移植する初の異種腎移植に成功しました
https://ir.unither.com/press-releases/2024/12-17-2024-120130031
レシピエントはアラバマ州に住む53歳女性 Towana Looney
母親に生体腎移植ドナーとして腎提供後、妊娠高血圧を契機として腎不全となり透析導入されていたが、クロスマッチ陽性のために腎移植が受けれない状況であったそうです
UKidney™異種腎移植はNYU Langone HealthのRobert Montgomeryにより執刀されました
術後2ヶ月、腎機能は問題なく、異種感染の兆候もないということでした
2025年2月3日 United Therapeutics Corporation (Nasdaq: UTHR)からUKidney™ 異種腎移植の臨床試験計画がFDAの承認を得たとHP上で発表されました
2025年半ばに開始され、当初は6例、その後は60例まで、第 1 相/第 2 相/第 3 相複合試験 (フェーズレススタディ)を行う予定のようです
2 つのグループにおける UKidney の安全性と有効性を評価することを目的としています
対象患者は年齢 55-70 歳、ESRD の診断、少なくとも 6 か月間の血液透析であることと下記のいずれかの要件を満たしていることです
①医学的理由により従来の同種腎移植が受けられないと評価され、判断されたESRD患者
②腎移植の待機リストに載っているが、5年以内に脳死腎移植を受けるよりも死亡するか、移植を受けられない可能性が高いESRD患者
有効性エンドポイントには、参加者の生存率、UKidney のグラフト生存率、糸球体濾過率、および移植後 24 週間の参加者の生活の質の変化が含まれます。UKidney を受け取った参加者の全生存期間と UKidney 自体の全生存期間も有効性エンドポイントです
安全性エンドポイントには、有害事象および重篤な有害事象の発生率、全死亡率、タンパク尿、人獣共通感染症、日和見感染症の発生率が含まれます
腎不全医療に革命的な変化を起こす可能性のある異種腎移植が現実化してきました
異種感染症や慢性拒絶がクリアできるのか
経緯を見守ってゆきたいと思います
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2025.04.13 CNN 遺伝子改変ブタの腎移植、130日間の最長記録を樹立 米女性
https://www.cnn.co.jp/usa/35231720.html
CNNは前向きなタイトルをつけているが、遺伝子改変ブタ腎移植、急性拒絶によるグラフトロスのニュース
2024年11月25日 Towana Looney(53) ユナイテッド・セラピューティクス社の異種移植としては4例目になる、UKidney™を用いた遺伝子改変ブタ腎移植
2025年4月4日 感染症治療のため免疫抑制剤を減量したところ、急性拒絶反応を発症しグラフトロスのため移植腎摘出
感染症は異種感染症とは無関係と報道されているが詳細は不明
2014年より Urgent Strat PD(カテーテル留置から24時間以内の貯留開始)を行ってきましたが、とくに問題なく、緊急導入や入院期間短縮に役立っています。
こちらの研究でも、24時間以内の貯留開始でリークや感染の増加は見られなかったと結論しています。Feasibility of a break-in period of less than 24 hours for urgent start peritoneal dialysis: a multicenter study Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Renal Failure
2019年のISPDガイドライン 腹膜透析アクセス造設と維持に関するガイドラインにおいて、リークリスクを最小化するために、カテーテル留置術2週間後からの貯留を推奨しているため、いまだにUrgent Strat PDを採用していない病院も多いようですが、間違っています。
CREATING
AND MAINTAINING OPTIMAL PERITONEAL DIALYSIS ACCESS IN THE ADULT PATIENT: 2019 UPDATE
PERITONEAL
LEAKAGE AND MANAGEMENT
l We recommend that initiation of dialysis following catheter placement
be delayed for 2weeks when possible to minimize the risk of leaks (1B)
l We recommend that acute and urgent start of PD <2 weeks following
catheter placement utilize a recumbent, low-volume, intermittent dialysis
regimen, leaving the peritoneal cavity dry during ambulatory periods to minimize
the risk of leak (1C)
l We recommend the use of CT peritoneography or peritoneal scintigraphy to investigate suspected peritoneal boundary dialysate leaks (1A)
最近のUrgent Strat PD(USPD)についての文献をまとめておきましょう
2017年からUrgent Strat PD を取り入れているブラジルからの興味深い報告
Urgent Strat PDによる導入を開始してから、なんと、3年間でPD患者数が256%と驚異的に増加したそうです
Urgent-start
dialysis: Comparison of complications and outcomes between peritoneal dialysis
and haemodialysis.
Dias DB,
Mendes ML, Caramori JT, Falbo Dos Reis P, Ponce D.
Perit
Dial Int. 2021 Mar;41(2):244-252. doi: 10.1177/0896860820915021. Epub 2020 Mar
30.
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0896860820915021
PD患者増加には、やはり、Urgent start PDによるスムーズな導入が鍵になっているようです
Urgent-Start
Peritoneal Dialysis: The First Year of Brazilian Experience.
Bitencourt
Dias D, Mendes ML, Burgugi Banin V, Barretti P, Ponce D.
Blood Purif. 2017;44(4):283-287.
カテーテル挿入はタイのベッドサイド挿入と同じ方法
http://www.jmatonline.com/files/journals/1/articles/1495/public/1495-4560-1-PB.pdf
腎臓内科医による挿入
局麻下経皮セルジンガー法
正中もしくは傍腹直筋アプローチ
コイル型カテーテル
深部カフのタバコ縫合なし、腹直筋前鞘前面に留置
彼らは72時間以内にHigh volume PD (30ml/kg)の透析液貯留を行うそうです
カテーテルトラブルは多い印象
外科的修復を要したカテーテル位置異常 8/51例 15.6%
リーク 4/51例 7.8%
興味深いのは、退院後は手技取得まで透析センターで隔日8-10hのAPDトレーニングを行うそうです(夜間?)
日本も夜間は透析室ベッド空いてるので、オーバーナイトPDトレーニングもありですね
2020年にCochrane ReviewでもUrgent Start PDを支持するレビューとなっています
https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD012913.pub2/epdf/full
タイから緊急導入でも問題なくできるという内容の論文
June 10,
2022 Kidney International Reportsにタイのマハラトナコンラチャシマー病院からの2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群を比較した論文
https://www.kireports.org/article/S2468-0249(22)01434-6/fulltext
この病院は1680床もあるタイの巨大基幹病院のようです
2018年11月から2020年2月、緊急透析導入の必要な成人207人を対象
2-4週間の血液透析後にPD導入した群とUrgent Start PD群の比較
導入6週目の死亡率に差はなく、複合的合併症は37% vs 19%、透析関連合併症 24% vs 4% とUrgent Start PD群のほうが少なかった
結論として、緊急透析導入もUrgent start PDで問題なくできるということです
カテーテル留置は年間30例以上3年以上の手術経験のあるベテラン腎臓内科医によって局麻下セルジンガー法で留置
タイは痩せているひとが多いのでテンコフ留置は容易だろうなと想像
また、腎臓内科医がカテ留置を行うので、外科コンサルが不要で、緊急導入時に即座にカテ留置できる背景もあるようです
貯留量は800-1000mlを仰臥位で開始し、2週間以内に1.5-2.0Lまで貯留量を増加
導入期CAPDは5日/週とされていています、公的病院なので土日は公務員は働かないのかな?
リークはやはりUrgent
Startのほうが7/104と多い(HD→PD2/103)ようですがなんとかなったと書いてありますね
セルジンガーなのでこのくらいのリークはしょうがないでしょうね
ちなみに私どもが最近開発したミニマム創でリークはゼロです
アメリカでは2019年にThe Advancing American Kidney Health (AAKH) Executive Order(大統領令)やここ数年のCOVID-19パンデミックによって在宅透析普及が加速しています
スムーズな導入のキーになるのはUrgent start PD(カテ留置から24時間以内の導入)ここ数年のホットトピックになっています
2014年よりUrgent start PDを取り入れてきましたがまったく問題ありませんでした
海外ではオペ室と外科医や麻酔科医のチャージが高額なことも背景にあるようですが、途上国ではベッドサイドでの経皮セルジンガー法が行われている国も多いです
NHS 2014
Data Baseによると英国では腹膜透析カテーテル留置術の比率は下記のようになっていました
外科的 38.1%
腹腔鏡下 18.1%
経皮的 28.3%
PDファーストのタイからの経皮セルジンガーカテーテル挿入&Urgent start PDの報告
Urgent
start HD → PD よりも Urgent start PD のほうが合併症が少なく臨床成績も良好という報告
Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure. Parapiboon W, et al. Kidney Int Rep.2022
日本は病院資源が豊かで(とくに金銭面での)オペ室使用のハードルが低いので、ベッドサイドにこだわらなくてもよいとは思います
また、日本は医療事故に対する医療訴訟環境が世界最悪なので、医療安全第一がもとめられることもあります
いずれにせよ、Urgent
start PDにより短期間のスムーズな導入が可能になることで、PD導入のハードルが下がることは間違いないようです(自験も含めて)
経皮セルジンガー法によるカテーテル留置も症例を選んでおこなってみてもよいでしょう。最近、開発したミニマム創(創長2-3cm)テンコフカテーテル留置術がより有力な手術手技になると考えています。
Refference
CREATING AND MAINTAINING OPTIMAL PERITONEAL DIALYSIS ACCESS IN THE ADULT PATIENT: 2019 UPDATE
Cochrane Review Urgent Start PD 2020
Feasibility of a break-in period of less than 24 hours for urgent start peritoneal dialysis: a multicenter study Volume 35, pages 1489–1496, (2022) Renal Failure
1.
Analysis of mechanical
complications in urgent-start peritoneal dialysis Volume 35, pages
1489–1496, (2022) Journal of Nephrology
2.
Randomized Study of Urgent-Start
Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients
Transitioning to Kidney Failure Volume 35, pages 1489–1496, (2022)
KI REPORT
3. Feasibility of a break-in period of less than 24 hours
for urgent start peritoneal dialysis: a multicenter study Volume 35, pages 1489–1496,
(2022) Renal Failure
4.
Urgent-start peritoneal dialysis:
Association with outcomes Volume 35, pages 1489–1496, (2022) PDI
5.
Urgent vs. planned peritoneal
dialysis initiation: complications and outcomes in the first year of therapy Braz. J.
Nephrol. 44(4) Oct-Dec 2022
R Randomized Study of Urgent-Start Peritoneal Dialysis Versus Urgent-Start Temporary Hemodialysis in Patients Transitioning to Kidney Failure. Parapiboon W, et al. Kidney Int Rep.2022
2025年1月12日 m3.com医療維新、松永正訓(ただし)先生の連載「けっこう楽しい開業医ライフ」に、【医師こそ読むべき『透析を止めた日』】というタイトルの記事がアップされました。
https://www.m3.com/news/iryoishin/1252044
本質を突いた素晴らしい論評になっています。
私どもの【鹿児島モデル】も紹介していただいています。
以下、100%の共感とともに、本文から引用紹介させていただきます。
医療者はスピリチュアルケアを含んだ緩和ケアの提供が必要。
スピリチュアル・ペインの本質は、「時間性」「自律性」「関係性」の3つの喪失という学説。
「時間性」を失うとは、死によって過去が消えることである。これまで積み上げてきた人生が消えること。そして、当然、未来も消える。過去・未来という時間が消えれば自分が依って立つ現在も消える。
「自律性」を失うとは、自分の身体のコントロールを手放すということ。できないことが増えて、自分が人でなく「物」に近づくと、人は己の存在に価値を見出せなくなる。
「関係性」を失うとは、自分を取り巻く人や物と別れるということである。人間とは人と人、あるいは物との関係性で生きている。また、関係性を築くために生きているとも言える。そのつながりを失うとき、魂は痛みで悲鳴を上げる。
この本を読んで不快になる医師もいるかもしれない。だが、医師であれば誰でもこの本を読んだ方がいい。いや、読むべきであろう。透析は自分には関係ないという考えは持ってはいけない。すべての医師が医療を広く見るべきだ。
いいノンフィクションは、物語る力が強く、多くの人が知らない世界を知らしめ、そして読み手の思考や行動を変容させる。堀川さんは、この本を通じて、ある意味で作家人生をかけて医療界に変革を迫っている。
真に拠り所となる医療者はどこにいるのだろうか。
透析を巡るトータルケアが少しでもよくなってほしいという患者家族の祈り。
われわれはその異議申し立てに真剣に応えなくてはならない。
私どもは、下記のような感染リスクの高い患者には、イソジンゲルを出口部処置にルーチンで使用 しております 低栄養・ 緊急導入・ 高度尿毒症・ 糖尿病・ ステロイド・ 超高齢など しかしながら、テンコフカテーテル添付文書に、下記のように書かれており、イソジンの使用は大丈夫なのかと、よ...