2024年12月23日月曜日

米国における営利目的の不適切な内シャント治療と訴訟

 2022/7/13 北米フレゼニウスグループが不要な内シャントPTA治療を営利目的で行っているという、衝撃的な腎臓内科医の内部告発から始まった訴訟が、連邦虚偽請求法で連邦政府も原告に加わるということで大騒動になっていることをお伝えいたしました

https://www.justice.gov/usao-edny/pr/united-states-files-claims-alleging-fresenius-vascular-care-inc-defrauded-medicare-and ヘルスケアネットニュースでも取り上げられていました DOJ files False Claims Act case against dialysis giant Fresenius alleging unnecessary vascular procedures https://www.fiercehealthcare.com/providers/doj-joins-whistleblower-suit-accusing-fresenius-medical-care-performing-thousands 北米フレゼニウスメディカルケア(FMCNA)は2500以上の透析ユニットで20万人を超える透析患者を治療しているメガ透析フランチャイジーです フレゼニウス傘下のバスキュラーアクセスセンターAzura Vascular Care(Azura)は全米に60以上のユニットがあります https://www.azuravascularcare.com/ ニューヨークのユニットで2012-2018年に行われた2303件のVA治療のうち1288件(55.92%)が医学的に不必要だったと指摘されています メディケアが今回この訴訟に参加することになった背景には、ニューヨークでシャントPTAに関する大きな診療報酬詐欺事件があったためのようです 2018 年 12 月 中国上海の名門、復旦大学出身でMount Sinai Beth Israel勤務経験もあるニューヨークマンハッタンで開業していた血管外科医Feng Qinが内シャントPTAの費用をメディケアに不正請求した罪で起訴され 2021年3月 なんと80万ドルもの巨額賠償金支払いと4年間の公的保険指定医停止処分を受け入れた事件があったのです https://www.medpagetoday.com/special-reports/exclusives/91586 個人クリニックでこの額ですから、フランチャイジーでは天文学的な賠償金になることが予測されます、当然ながらフレゼニウス以外の透析アクセスセンターもターゲットにするでしょう ちなみに20年前のアメリカUSRDSによると透析関連医療費の25%程度がアクセス関連医療費と言われており Butterly D, Schwab SJ: Reducing the risk of hemodialysis access. Am J Kidney Dis 34: 362-363, 1999 国内では、2001年に大平整爾先生が、当時の血液透析患者数17.5万人にたいする、透析医療費9275億円、アクセス関連医療費877億円(9.5%)、修復要する医療費83億円(0.9%)と推定していました。 透析会誌 34 (2): 107~108, 2001 6. 透析医療経済とブラッドアクセス 第45回日本透析医学会パネルディスカッションより https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt1994/34/2/34_2_107/_pdf 当時、シャントPTAは処置料のみの算定でしたが、現在は手技料12000点が請求可能となっており、PCB( 138,000円)やDCB(IN.PACT170,000円)、ステントグラフト(VIABAHN340,000円)のような超高価なデバイスも頻用されており、近年、アクセス関連医療費は血液透析関連医療費の25%程度かそれ以上になっている可能性すらあります。 実際、透析施設における収益はアクセス関連によるものが圧倒的に大きく、透析アクセス専業クリニックも数多く開業しています。 透析アクセス治療が地域内でできず、市をまたいで越境で治療を行っている場合、ただでさえ大赤字の市町村国民健康保険や後期高齢者広域連合から資金が域外流出しています。 我が国でも、医学的適応のない内シャント治療が営利目的で不必要に行われていないか、厳格な監視が必要になっています。

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