2024年12月23日月曜日

医師・弁護士ダブルライセンスを持つ竹口先生の講演会

第18回東京西南部腎不全医療研究会 日時 : 令和4年9月13日(火)19:00 ~ 20:00 形式 : ハイブリッド開催(会場:TKPガーデンシティ渋谷4D) 参加登録 https://bit.ly/3PR3t1j 医療訴訟の構造 -透析見合わせの場合-   竹口 文博 先生 弁護士(第一東京弁護士会 総合法律研究所 医事法部会所属) 東京医科大学 腎臓内科学分野 兼任准教授

医師・弁護士ダブルライセンスを持つ竹口先生の講演会

現状すべての医師は説明義務違反・注意義務違反で訴訟対象であると学びました 

竹口先生の講演ポイントメモ

法律的な解釈として 医療機関は治療を行うことによって社会的価値があり、患者は治療を求めて受診するのであるから、医師は治療推奨するのが原則 患者が透析拒否であったとしてもまずは説得することが医師の義務 腎不全治療の選択肢として腎移植や腹膜透析の説明を行わなかったら説明義務違反 透析拒否の意思表示があり、いったん透析中止しても、意思変更あればいつでも撤回可能で再度透析再開できる、ということを説明する義務がある 患者の意思は、適宜、家族など第3者とともに確認する義務がある 適切なセカンドオピニオンの提案を行う義務もある 以上について公的文書であるカルテに記載を行っておく必要がある(最も重要)

肝硬変大量腹水腎不全患者の腹膜透析とアルブミン投与

 肝硬変大量腹水腎不全患者に腹膜透析導入することがあります

腹膜透析導入により腹満改善し食事量は増えることが多いですが、それでも排液に喪失するアルブミンも多いのでアルブミンの投与が必要なケースが殆んどです このような非代償性肝硬変低アルブミン血症へのアルブミン投与量の制限は現在なくなっています(レセ詳記は必要) SBP予防や薬物キャリアーとしてのアルブミンの補充効果が期待できます、下記記事がよくまとまっています 大きく変わった肝硬変診療におけるアルブミンの使い方 2021/12 ~知っておくべき知識のアップデート~ 奈良県立医科大学消化器代謝内科 教授 吉治 仁志 先生 https://www.jbpo.or.jp/med/jb_square/alb/report/01/01.php

重度訪問介護について

 障害を持つ腹膜透析患者さんに在宅生活をおくってもらうため、障害福祉制度である重度訪問介護を活用する方法があります

あまり周知されておらず利用も地域差が大きいようです 東京新聞による良記事です 「重度訪問介護」の利用が低迷しているのはなぜなのか…障害者の1人暮らしが当たり前にならない現実 2022年11月4日 東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/211863 「重度訪問介護」利用率に地域間格差 東京は栃木の18倍 国「問題ではない」 調査企業や現場の訴えは? 2022年12月5日 東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/217881

介護老人保健施設入所者に対して医療保険から算定できる医療サービスの概要 2008中医協 資料

 介護老人保健施設入所者に対して医療保険から算定できる医療サービスの概要 2008中医協 資料

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1022-8h.pdf

介護老人保健施設入所者に対して医療保険から算定できる特定保険医療材料 001腹膜透析液交換セット 002在宅中心静脈栄養用輸液セット 003在宅寝たきり患者処置用気管内ディスポーザブルカテーテル 004在宅寝たきり患者処置用膀胱留置用ディスポーザブルカテーテル 005在宅寝たきり患者処置用栄養用ディスポーザブルカテーテル 006在宅血液透析用特定保険医療材料(回路を含む)(1)ダイアライザー2)吸着型血液浄化器

病院・診療所と在支診連携時の在宅療養指導管理料算定

 病院・診療所と在支診連携時の在宅療養指導管理料算定について

それぞれ別個に管理料算定が可能(例:病院→腹膜 在支診→在宅自己注射指導管理料 ) 令和4年の診療報酬改定 第3 関係法令等 (2)1の診療報酬の一部を改正する件 令和4年厚生労働省告示第54号 別表第1の128ページ 第2節 在宅療養指導管理料 第1款 在宅療養指導管理料 3

「高額介護サービス費」制度について

 「高額介護サービス費」制度について

介護保険サービスの自己負担額は所得に応じて1〜3割 例えば、要介護5で2割負担だと、37万円の2割負担で7万2,000円/月とかなり高額になります 施設入所の場合、さらに12-16万円/月程度の入所費用がかかると費用負担はさらに高額になってしまいます 最近、比較的年金収入がある方(下記の区分で④に相当)で、施設入所時に費用負担がハードルになったケースがありましたので「高額介護サービス費」制度についてまとめておきます 医療保険における高額療養費制度の介護保険版が「高額介護サービス費」になります 負担上限は収入によって6段階あります ①生活保護を受給している方等 負担上限1万5,000円 ②全員が市区町村民税非課税の世帯かつ前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等 1万5,000円(個人) 2万4,600円(世帯) ③全員が市区町村民税非課税の世帯(①②に該当しない方) 2万4,600円(世帯) ④市区町村民課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 4万4,400円(世帯) ⑤課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 9万3,000円(世帯) ⑥課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 14万100円(世帯) 患者さんは在宅で腹膜透析おこなっていましたが脳幹梗塞発症、急性期病院で気管切開・腸瘻PTEG造設 本人のACP/DNARオーダーあったにも関わらず家族希望で延命処置フルコース 回復期リハ期限切れで退院勧奨、ADL全介助状態で紹介、施設入所をセットアップ 年金収入多いとはいえ施設入所になると配偶者の生活費が消えてしまう状況 要介護5の37万円の2割負担で7万2,000円/月→「高額介護サービス費」自己負担4万4,400円 施設費勉強してもらって10万円/月 合わせて14万4000円/月の費用負担で入所 腹膜透析や吸痰、経管栄養は有料老人ホーム看護師が施行 私が訪問診療で医学的管理(腹膜透析・気切・腸瘻PTEG) サービス利用料の自己負担額が上限額を上回った場合、自治体から支給申請書が自動的に送られてきます 高額介護サービス費の支給対象となるのは、「居宅サービス」「介護施設サービス」「地域密着型サービス」 施設サービスの食費、居住費、日常生活費などは、もともと介護保険対象外の費用なので、高額介護サービス費の対象からは外れます https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/payment/kougakukaigo/ ちなみに、入院中の費用負担は3万円/月(身体障害者1級かつ経管栄養なので光熱費とおむつ代+αのみ)だったそうです これでは、日本中で社会的入院が増えるわけです 社会コストで考えると施設入所のほうが圧倒的に低廉なのですから、入院→施設としたときの患者・施設への経済的インセンティブが必要です

フルアシスト腹膜透析患者の施設入所の場合、介護保険上限は優に超えてしまいますが、オーナーと直接交渉して介護保険上限内のケアプランで受けてもらっています(越えた分の患者請求はしない) 施設経営者視点で考えると、施設常駐看護師がケアすればとくに人件費持ち出しはないのと、介護度が高ければ介護保険上限のケアプランで経営的には成立します 血液透析の場合、血液透析日は病院受診なのでデイサービスが組めないのにたいし、腹膜透析は毎日介入可能ですし、社会的入院も終末期まで回避できるので施設ベッドを埋める意味でも施設側のメリットも大きいのです

私の知っている施設は、グループ全体で20名ほどの血液透析患者が入所しており、患者の安寧やコロナ対策、送迎その他のことを考えると、全員腹膜透析にしたいのだそうです しかしながら、いったん患者が腹膜透析を希望しても、病院側の患者抱え込み(説得)があり実現は容易ではないようです いま知恵をしぼって作戦を立てているところです


APDの電気代について

 電気代高騰していますがAPDの電気代について参考まで

APDかぐや平均消費電力 400W程度として(最大消費電力720W) 平均消費電力で夜間8時間月30日稼働 400W x8h x30days = 96000Wh/月 1kWhあたりの電力量料金を26円とすると 26円/kWh x 96KW = 2496円 /月(83.2円/日)

JMSさんから情報いただきました 以下引用 PD-MINI SOLAの電力と電気代は以下の通りです。 まず、取説に記載の消費電力250VAとは、すべての負荷(ヒータ、モータ、液晶等)が同時にONした時の最大の消費電力です。 使用する環境にも左右されますが、SOLAの消費電力は、常時約40W、モータ、ヒータ類が約210W(稼働率10~50%)、合計で60~140W程度となりますので、治療中の平均は約100Wと考えて差し支えないと思われます。
以上をふまえて料金を計算してみますと・・・ 1時間当たりの電力を100Wとし、主要電力会社の1時間あたりの平均単価を27円/kWhとすると、 1時間あたりの電気代(単位:kWh)は 100W=100÷1000=0.1kWh 0.1kWh×1時間×27=2.7円 となります。 治療時間が8時間であれば2.7×8=21.6円となります。
家電でたとえるとマッサージチェアやオーディオコンポなどでしょうか。(使用時間がそれぞれ違うので電気代は同じにはなりません) ドライヤー(600~1200W)や洗濯機(500~900W)に比較すると1時間当たりの消費電力は小さいです。

医療機関以外の介護現場で実施される事項についてが医行為であるか否かについて

 医療機関以外の介護現場で実施される事項についてが医行為であるか否かについて、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(医政発1201第4号 令和4年12月1日)

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/48676/20221201ikoui2.pdf

看護師や介護職員の医療(補助)行為について 東京都医師会

https://www.tokyo.med.or.jp/docs/handbook/338-348.pdf

腹膜透析については記載がないのですが、過去の疑義照会の結果、厚生労働省の見解として、APDセットアップ、接合・切り離し、CAPD注排液、アラーム対応は医療行為にあたるので看護師である必要があります 機材準備・APD電源・片付けは上記解釈に準じてケアスタッフでも可能と考えています しかしながら、我が国の人口減少高齢化の状況では、吸痰や経管栄養と同様もしくは中国のように、トレーニングを受けたケアスタッフに腹膜透析看護業務をタスクシフトする必要が早急にあると感じています

医心館 医療難民を救う「在宅型医療病床」は社会的入院透析患者の福音になるか

日本の富豪ランキング2022 Forbes JAPAN

医心館の柴原慶一先生が1750億円で34位にランクインしています

https://forbesjapan.com/feat/japanrich/ 柴原先生は1964年生まれ名古屋大学医学部出身、京都大学で分子生物学者として研究されていましたが2010年46歳のときに一念発起して在宅介護分野に転身 在宅型医療病床という概念でがんや難病患者などの終末期・慢性期のケアに特化した住宅型有料老人ホーム「医心館」を展開し急成長 https://ishinkan.amvis.com/ わたしはこの本を立ち読みして知りました 医療難民を救う「在宅型医療病床」幻冬舎メディアコンサルティング(2018/08発売) https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784344917767 2019年にジャスダックにアンビスホールディングスを上場 https://www.mag2.com/p/money/823992 腹膜透析と医心館の取り組みは親和性が高いと感じており、以前より連絡を取っていましたが、透析業界との棲み分けを気にされ躊躇されていました 最近、ポストコロナ時代ニューノーマルに応じ透析領域も対応することにしたそうです(個人的コミュニケーション) 医療依存度の高い腹膜透析患者が施設でディストピア病院に比べ極めて高いQOLで生活できることを鹿児島の【あおぞらケアグループ】との経験で知っているので、ぜひ柴原先生にも頑張っていただきノウハウを共有し協力してゆきたいと考えています 異常に保守的で閉塞した医療業界はこのようなところから革命的変化が起きるのだと思います

血液透析患者の内シャントによる脳虚血と認知症

 血液透析は腹膜透析より高齢者の認知症発症リスクが高いことは以前から指摘されています

2019年JASNで血液透析患者の透析中の脳血流低下による認知症発症について証明した論文が発表され、血液透析患者の脳を保護するための方策が速やかに必要と指摘されていました 高齢者にラージシャントになるグラフト造設による血液透析は認知症リスクを高めるため医学的禁忌に近いという臨床上の実感が証明されたのでした Investigating the Relationship between Cerebral Blood Flow and Cognitive Function in Hemodialysis Patients. J Am Soc Nephrol. 2019 Jan;30(1):147-158. https://jasn.asnjournals.org/content/30/1/147   Hemodialysis linked with decline in cognitive function. Nephrology News & Issues Dec. 17. 2018 https://www.healio.com/nephrology/chronic-kidney-disease/news/online/%7B9d723d2a-bf06-4fc7-8d00-5acb4dd2c623%7D/hemodialysis-linked-with-decline-in-cognitive-function   2021年にはカナダオンタリオLawson Health Research InstituteのAnazodo, Udunna CらがDialysis-Associated Neurovascular Injury (DANI)というコンセプトを提唱 https://journals.lww.com/cjasn/Fulltext/2021/07000/Dialysis_Associated_Neurovascular_Injury__DANI__in.20.aspx 不均衡症候群と同様の機序を考えているようでした(フリーなので添付しておきました) 私は個人的にはシャント肢側の脳血流低下と頚静脈逆流による脳還流不全(脳うっ血)が大きな原因ではないかと考えています 2023年3月JASNに同じグループ(カナダオンタリオLawson Health Research Institute)のAnazodo, Udunna Cらが、血液透析中のMRIとスペクトを用い、血液透析前と終了60分前の評価を行い論文化しています その結果、驚いたことにたった1回の血液透析セッションでも、脳虚血による白質の脳浮腫や脳代謝障害(N -アセチル アスパラギン酸およびコリン濃度の減少)が起きることを示しています Hemodialysis-Related Acute Brain Injury Demonstrated by Application of Intradialytic Magnetic Resonance Imaging and Spectroscopy. Anazodo UC, Wong DY, Théberge J, Dacey M, Gomes J, Penny JD, Van Ginkel M, Poirier SE, McIntyre CW. J Am Soc Nephrol (IF: 10.12; Q1). 2023 Mar 9. https://journals.lww.com/jasn/Abstract/9900/Hemodialysis_Related_Acute_Brain_Injury.96.aspx この論文のMRI/SPECTの画像(画像)をみるとシャント肢片側性障害の脳白質障害が主で代謝性というよりシャント肢脳血流逆流による脳うっ血による血流障害と考えるほうが素直ですね 左右頚動静脈血流量とMRI/SPETの相関をみてみると良いと思います 血液透析によるDialysis-Associated Neurovascular Injury (DANI)は深刻な事実ですが、患者さんに知らされていないのは大きな問題だと感じています ラージシャントの流量調整は当然ですが、そもそもラージシャントになってしまうグラフトや近位側内シャントを回避すること、腎移植・腹膜透析という腎代替療法オルタナティブの提案を積極的に行う義務が私達にはあります また、高齢者に認知症を進行させてしまう血液透析ではなくアシステッドPDを提供できるようにすることもますます重要になってきます

シリコーンカテーテルとヨードについて テンコフカテーテル出口部のイソジン消毒に関する考察 Silicone Catheters and Iodine. Considerations for Iodine Disinfection of Tenchoff Catheter Exit Site.

私どもは、下記のような感染リスクの高い患者には、イソジンゲルを出口部処置にルーチンで使用 しております 低栄養・ 緊急導入・ 高度尿毒症・ 糖尿病・ ステロイド・ 超高齢など しかしながら、テンコフカテーテル添付文書に、下記のように書かれており、イソジンの使用は大丈夫なのかと、よ...